金融市場にも「見張り」がいる。アメリカの金融政策の動向を追いかけている「フェッドウォッチャー」だ。フェッドは、アメリカの金融政策を決定する「連邦準備制度理事会」(=Federal Reserve Board)の略称で、日本ではFRBと略されるが、アメリカ本国では冒頭の3文字から“Fed”と略されている。
FRBの金融政策は、株式や債券、外国為替などの市場のみならず、世界経済全体にも大きな影響を与える。FRBは世界経済という大海原に浮かぶ巨大な氷山であり、その中でかじを握る投資家にとって、目を離すことができない存在となっている。そこで、FRBを見張り、金融政策の動向を予測するフェッドウォッチャーが必要となるわけだ。
フェッドウォッチャーは、FRBが日々行う「公開市場操作」に目を光らせる。市場に資金を供給する「買いオペ」や、資金を吸収する「売りオペ」のタイミングや金額などから、FRBの金融政策の変化を読み解こうとする。
フェッドウォッチャーはまた、金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)を構成するメンバーの発言にも注意を払う。最高責任者のFRB議長は原則として年2回、議会で金融政策についての証言を行うほか、G7などの国際会議や講演会などでも発言をしている。フェッドウォッチャーは、その発言の微妙なニュアンスを読み取り、金融政策の動向を占うのだ。
金融政策はFOMCのメンバーによる多数決で決められることから、フェッドウォッチャーは、議長以外のメンバーの発言にも聞き耳を立てる。会合が終わってから3週間後に公表される議事録にも目を通し、FOMCのメンバーのうち、「誰が利上げに前向きなのか?」といった分析を行っている。こうした公になった情報に加えて、独自に築いた情報源も駆使し、より正確な情報を提供しようとフェッドウォッチャーたちはしのぎを削る。FRBはアメリカ本国のみならず、全世界の景気や市場動向から政治情勢に至るまで、あらゆる情報を総合的に判断して、金融政策を決定している。フェッドウォッチャーにも同程度の分析力が求められるため、アナリストの中でも、特に高い能力が要求されている。
日本銀行の金融政策を予測する「日銀ウォッチャー」など、中央銀行の動向を探る「ウォッチャー」は世界各地に存在している。予測を誤ると、投資家という船が氷山にぶつかったり、嵐の海に突っ込んでしまったりする恐れもあるため責任は重大だ。しかし、フェッドウォッチャーの予測は決して完璧ではなく、間違いを犯すこともある。最終的な責任は、投資家という船長であり、フェッドウォッチャーの意見を参考にしながら、かじを握ることが必要なのである。