金利にも同じような存在がある。「ロンドン銀行間取引金利」(London InterBank Offered Rate)だ。ロンドン金融市場で銀行同士が資金の貸し借りをする際に、資金の出し手(offered)が示す金利のことで、一般的には「LIBOR」(ライボー)という略称で呼ばれている。
金利は時々刻々変化し、銀行によっても異なる。そこで、毎日午前11時、イギリス銀行協会が複数の有力銀行からの報告を集計して発表しているのだ。
ロンドン金融市場では、ドルはもちろん、日本円、ユーロにポンドと、様々な資金の取引が行われている。東京やニューヨークでも同様の取引が行われているが、ロンドン金融市場はアジアと北米の中間地点にあり、世界中の金融機関がそろって参加している。そこで、ここで決められたLIBORが金利の「世界標準」となっているのだ。
LIBORは、期間が1年以内の短期金利に限られている。今日借りて翌日返すという「オーバーナイト物」から、1年物までが公表されているが、最も重要視されているのは6カ月物で、世界の短期金利の中心的な指標となっている。
LIBORは、融資の場面で重要な役割を担っている。半年ごとに貸出金利を見直す変動金利で資金を借りる場合、「LIBOR+3%」と言った具合に、LIBORを基準としてその水準を決めることが少なくないのだ。
LIBORを基準とした融資は、国際的な大企業の他、外国政府やその主導による巨大なプロジェクト向けの融資などでも行われている。こうしたことから、LIBORは借り手の信用力を示す指標となる場合もある。信用力が高いほど金利は低くなるため、信用力が大きく劣っている場合、「LIBOR+5%」と高い金利が設定される。
一方で、銀行並みの信用力を持つ企業ならLIBORと同じ融資金利「LIBORフラット」、さらに超優良企業なら「LIBOR-1%」などという場合もある。LIBORとの比較は、借り手の信用力を示す基準の一つとなっているのだ。
また、LIBORは、各国の金利水準を比較する場合にも使われる。LIBORの中心となる6カ月物や3カ月物などで、ドルや円、ユーロなどの金利が比較されているのだ。
相対的に金利が高ければ、その国に資金が流れやすくなり、これが為替相場の上昇の要因となる。反対に、金利が低ければ資金が流出、為替相場の下落要因となる。LIBORの動向は、国際的な資金の流れを見極める上でも重要な情報を提供してくれるのである。
2009年8月24日、3カ月物のLIBORで、円が0.38875%、ドルが0.38688%と、円の金利がドルより約0.002%高くなった。アメリカの金融不安が薄れて、ドル金利が低下してきたことが原因で、日米の金利が逆転したのは16年ぶりのこと。これを受けて、外国為替市場では、相対的に金利の高い日本に資金が流入し、「円高・ドル安」が進むとの思惑が広がったのだった。
金利の国際的な標準であるLIBORは、グリニッジ標準時間と同様に、世界共通の尺度となっている。その動向は世界経済の縮図であり、金融取引で欠くことのできない存在なのである。