職場の同僚や仲のよい友人であれば、短い期間でお金を融通し合うことは珍しくない。相手の素性がよく分かっているので、大きな不安がないからだ。
企業でも、比較的短い期間で資金が不足する場合がある。この際、資金を集めるために発行されるのが「コマーシャルペーパー」で、「CP」と略されることが多い。
CPは、額面金額が1億円以上、期間は1年未満の短期の約束手形、つまり「借用証書」だ。通常の借り入れでは、返済されなくなった場合に備えて「担保」が要求される。しかし、CPは「無担保」だ。したがって、CPを発行出来るのは返済が滞る恐れの小さい優良企業に限定され、CPの買い手、つまり資金の貸し手も、銀行や生命保険会社、年金基金などの機関投資家に限定されている。つまり、信頼し合っている仲間内であることが、「無担保」でのお金の貸し借りを可能としているのだ。また、返済が滞る可能性の低い優良企業が発行することから、適用される金利も低い。
このようにCPは、会社の同僚や知人との間での貸し借り同様に、高い信用に裏打ちされた、担保もなく低金利での資金調達手段なのだ。
ところが、景気が極端に悪化したり、金融市場全体が不安定になったりした場合、CPの取引に支障が出てくる場合もある。どんな優良企業のCPであっても、「返済されないのでは?」という不安がぬぐえなくなるからである。その結果、CPの金利が大きく上昇したり、場合によっては発行が出来なくなったりして、企業の資金調達が困難になってしまう。いわゆる信用不安が発生するわけだが、そもそもCPは優良企業だけが発行出来るもの。当然、信用力が劣る企業の場合、資金調達は一層難しくなる。こうしたことから、CPの金利や発行状況は、個々の企業の信用力のみならず、金融市場全体の状況を示すバローメーターの役割も持っているのである。
会社の同僚同士のように、信頼感に裏打ちされた優良企業だけに発行が許されるCP。その発行が円滑に行われることは、円滑な経済活動を生み出すための重要な条件の一つなのである。