うさぎにも、色々あります。中には、飛躍が苦手なうさぎもいます。例えば、不思議の国のアリスに登場するうさぎさん。いつも遅刻しそうで焦っています。飛躍どころか、遅滞が得意技。「間に合わない」ことが特技なのです。実をいえば、11年についても、心配されるのがこの点です。対応が間に合わず、手遅れで悲惨な状態に陥ってしまうかもしれません。
手遅れとなった結果、11年に起こりそうな怖いことが二つあります。二つの恐慌です。年明け早々、恐慌が二つも来るというのは、ぶっそうな話で申し訳ありません。ですが、どうしてもこれらが心配になるのです。
二つの恐慌は、その一が財政恐慌、そしてその二が新興国恐慌です。
財政恐慌にも2種類の経路が考えられます。財政再建型恐慌と財政破綻型恐慌です。どこをみても赤字財政に悩む国々ばかりの昨今、彼らが財政再建に成功すれば、それ自体としては結構なことです。ですが、彼らが財政再建に成功するということは、とりもなおさず、これまで大型不況対策という形で各国の経済を支えて来た大盤振る舞い財政という名のつっかえ棒が、彼らの経済からはずれることを意味します。その結果、自立力に欠ける各国の経済が大失速すれば、それで財政再建型恐慌の出来上がりとなってしまいます。
他方、国々が財政再建に失敗して、国家破綻があちこちで起きるようなことになれば、もとより、経済活動はまひ状態に陥ってしまいます。おまけに、倒産国家に対する債権放棄を余儀なくされる債権者が出て来れば、経済的二次災害が果てしなく広がります。
新興国恐慌も大いに気掛かりです。このところの新興諸国はおしなべてバブル気味です。これについては、先進諸国からの「余り金」の流入効果が大きく効いています。先進諸国は、いずれもデフレ脱却を目指して、金融大緩和を進めて来ました。ところが、そうして彼らが作り出した余り金は、彼らの母国の中では回っていない。そうは問屋が卸さずに、新興諸国に出稼ぎに出て、バブルの種をまき散らしているのです。そのバブルが弾け飛べば、新興国恐慌が出来上がりです。
デフレの国から出たカネが、行き着く先で初めはバブル、やがて恐慌を引き起こす。この構図に皆さんは見覚えがおありでしょう。そうです。リーマン・ショックの時と全く同じです。ただし、あの時は、日本から流れ出た余剰資金が巡り巡って、アメリカでバブルとその破綻をもたらしました。要は1対1の関係だったわけです。ところが、今回は、これが多数のデフレ先進国対多数の新興諸国の関係になっているのです。その中で金融破綻が起これば、その衝撃はリーマン・ショックの比ではないでしょう。
こんな調子で二つの恐慌が発生するのを、2011年うさぎは果たして何とか手遅れとならずに阻止することが出来るでしょうか。いずれも、なかなか難しいと思います。地球は一つ、されど国々は多数。このグローバル時代の現実の中で、国々は、国境を越えたカネの流れが引き起こす金融暴走の後始末を強いられる。そのための財政拡張の行き過ぎに歯止めをかけようとすれば、財政恐慌への道を開くことになってしまう。先進諸国がデフレ回避に励もうとすれば、彼らの国境を越えたカネの流れが新興国恐慌の種をまく。
困ったものです。二つの恐慌が起きてしまえば、アリスの遅刻うさぎは、もう一匹のうさぎに変身することになってしまいます。変身後の姿が因幡の白うさぎです。ワニたちに皮を剥がれて、満身創痍(そうい)となるあの可哀そうなうさぎさんです。2011年うさぎがこの変身を強いられないよう、祈るばかりです。