ギリシャはユーロ圏を離脱する。結局のところ、それが最良の決着だと思います。ギリシャにとっても、ユーロ圏にとっても。人間万事、身の丈にあった鞘に収まるのが一番です。高みを目指しての背伸びは、決して悪くありません。ですが、ユーロ圏のような単一通貨圏は、特段、高みへのチャレンジを望まない者たちにただ乗りを許す。そこに大きな問題があります。
別段、ギリシャだけが悪いわけではありません。経済実態に大いなるばらつきがある経済圏の中で、単一通貨を導入すれば、どうしても、こういう事態に立ち至ってしまいます。これは、多分に制度設計の問題です。
ギリシャがユーロ圏の一員ではなかった時、ギリシャの通貨は「ドラクマ」でした。語源は古代ギリシャ語で「つかむ」あるいは「一握り」を意味します。おカネをたくさん握りしめたい。手当たり次第、つかみ金を手に入れたい。何となくそんな雰囲気のネーミングですが、格調高かった古代ギリシャ人たちにそんな思惑があったとは思えません。いずれにせよ、ギリシャはギリシャらしく、独自の名前の独自の通貨をもつのが一番です。
ところで、ドラクマを「どら熊」と書けば、落語の登場人物のようですね。長屋の住人、熊さん・八っつぁんの片割れです。どら熊と呼ばれている場面は、実をいえば、あまり聞きませんが、ほら熊はあります。
「大山詣り」という落語に、大ぼら吹きの熊さんが登場します。ほら熊がいれば、どら熊もいそうなものです。現に、ギリシャは自国の財政赤字について、誠にスケールの大きいほらを吹いていたじゃあないですか。
ユーロ圏のどら息子。すっかり、そんな目でみられがちとなってしまったギリシャです。この熊さん、いつまで、ユーロ圏という名の長屋の住人でいつづけることが出来るでしょう。いまや、あまり本人にとっても居心地の良くない住み家です。自分からいまのうちに出て行った方が得策でしょう。
スペインのかつての独自通貨は、「ペセタ」でした。江戸の長屋にペセタという名前の住人はいなかったでしょうが、ペセタの意味するところは、「ひとかけら」あるいは「ほんの一部」とか、「分数」といったところです。つかみ金のどら熊さんよりはかなり謙虚で律儀なイメージですね。それだけ、スペインは財政再建に懸命に挑んで来た…というわけでもないでしょう。
そもそも、いまや、いかに律儀に挑んでも、ユーロ長屋に住み続けるための家賃はスペインにとっても高くなり過ぎていると思います。この長屋、そろそろ店仕舞いが無難でしょう。