育ち盛りの新興諸国がコケれば、皆コケる。国境を越えてカネを動かす金融機関たちが窮地に陥れば、彼らからカネを借りている人々も、彼らにカネを貸している人々も、等しく窮地に陥ることになる。何でもかんでも一蓮托生。誰もが誰とでもつながっている。そんなグローバル時代は、油断も隙もならない時代です。
このことの怖さを、今、一番ひしひしと噛み締めさせられているのが、実は、日本銀行の黒田東彦総裁でしょう。少なくとも、そのはずです。
皆さん、ご記憶でしょうか。「チーム・アベ」率いる日銀の新体制が発足するまで、世間では日銀バッシングが声高でした。日銀の金融緩和が中途半端だから、日本はいつまで経ってもデフレから脱却できない。デフレに追い打ちをかける円高にも歯止めがかからない。日銀は犯罪的に無能だ。そう言わんばかりの悪口があちこちから聞こえる状況でした。
筆者は、こうした一連の日銀バッシングは全く的外れだったと思います。
その理由を語り出すと話が少々混乱してしまうので、ここではこの点に立ち入ることを避けますが、白川方明総裁時代の日銀は、端的に言ってよくやっていたと思います。誰かがコケれば皆コケるグローバル時代の厄介さを正しく認識し、そこにしっかり気配りしながら通貨価値の番人としての中央銀行の本来の役割を何とかしっかり貫こうとしていました。
ところが、「チーム・アベ」体制になったことで、状況は一変しました。今までの遅れを一気に取り戻さんとて、「異次元緩和」と自ら銘打った空前の大量資金供給が始まりました。この間の経緯は皆さんよくご承知の通りです。
そして、確かに「チーム・アベ」の日銀は一気に遅れを取り戻しました。誰よりも金融緩和に本腰を入れている。もう誰にも文句は言わせない。そのようなポジションを確立したのです。
ところが、その矢先に、アメリカが今回の方針変更を示唆したのです。必死に追いつこうとしていた相手が、ようやく肩を並べたところで、何と方向転換に踏み切ろうとしている。あと一歩のところに来たと思ったら、一転して周回遅れの位置に大転落。それが今の日本の金融政策の状況です。
このままで行けば、グローバル経済全体として金融タイト化の方向に向かう中で、日本だけが大緩和状態を続けているということになりかねません。そうなれば、いつまで経ってもゼロ金利の日本から資金がどんどん流出し、円相場は円安を通り越して暴落圏に突入し、国債相場も大暴落を演じることが懸念されます。
一蓮托生グローバル時代の空気を読み誤ると、全てが裏目に出る恐れあり。このことを、「チーム・アベ」はどう受け止め、どう咀嚼していくのでしょうか。ご一緒に見守っていきたいと思います。