3カ月ごとに発表される四半期統計は、一国の経済がどのようなペースで動いているかを把握する材料として、何かにつけて大いに注目されます。新聞でも、毎回、かなり大きく取り上げます。
筆者には、最近、日本のGDP統計がどうも奇妙な動き方をしているように思えて仕方がありません。奇妙というか、こういうことでいいのかな、と思ってしまうのです。
今の時点で最も新しいGDP統計は、2014年1~3月期に関するものです。この四半期には、GDPが実質ベースで前期の13年10~12月期に対して1.5%の伸びとなりました。前期比で1.5%増というのは、これと同じペースで4四半期、つまり1年間伸び続ければ、前年比で5.9%の成長を達成するという数字です。
前年比6%に近い実質経済成長率といえば、1960年代の高度成長期に立派に匹敵する数字です。日本の経済成長率がこんなに高い数字になるのは、久しぶりのことです。
ですが、この数字が達成されたカラクリは、皆さんもよくご承知の通りです。消費税増税を前にした駆け込み需要で、個人消費支出が爆発的に伸びた。それが理由です。そのことが、GDP全体の伸びを押し上げたに過ぎないのです。続く4~6月期、つまり現在進行中の四半期には、反動で、GDP成長率が大きく減速すると見込まれています。
ここで、2013年10~12月期を振り返ってみましょう。あの四半期の実質GDP成長率は、前期比0.2%でした。控えめですね。何とか、プラス成長を達成したというところです。
このギリギリのプラス成長に寄与したのが、公共投資と住宅投資でした。公共投資は、要するに公共事業です。そして、住宅投資が伸びたことには、やはり消費増税対応の駆け込みと、株高に煽られたミニバブル効果が効いたとみられます。
要するに、このところのGDPの動きは、多分に政策に振り回されているのです。公共事業と株高大作戦がGDPを押し上げる。そうかと思えば、増税政策が消費の行方を翻弄する。政策が攪乱(かくらん)要因になっているのです。これは、おかしなことです。本来、政策は、民間経済に対する助け手でなければいけません。民間経済をもてあそぶ手になってしまっては困るのです。
このところ、世の中が突然の人手不足になっているのも、やはり、政策の攪乱効果によるところが大きいと思います。公共事業に人手が取られる。円安・株高・談合春闘が「景気良くなってるみたい」感を煽る。だから、ファストフードやファストファッションの業界が突然、忙しくなる。
とりあえず、仕事があり、賃金が上がることが悪いとは言いません。ただ、あまりにも見せかけの官製景気回復に経済活動が躍らされると、どこかで全てが行き詰まる恐れがあると思うのです。
経済をもてあそぶ政策の手には、要注意、要注意。