実際に、ネット通販などでは、この両者の出合いが既に大いに頼りにされているようです。この人なら、きっとこれを注文するに違いない。過去のデータからそう思われる商品については、注文が来る前にあらかじめ発送準備を整えておく。いざ、予想通りに注文が来れば、あっという間に注文者の手元に商品が届く。
このやり取りの記録が、また新たなインプットとして、どんどんビッグ化していくデータの一環を形成することになる。こんな世の中になりました。
こんな状況に思いを巡らせている中で、ある映画のイメージが頭に浮かびました。
その映画は「マイノリティ・リポート」です。SF好きの皆さんはよくご存じでしょう。トム・クルーズ主演。監督は、かのスティーブン・スピルバーグです。2002年に公開されました。時は2054年。舞台はアメリカのワシントンD.C.です。「犯罪予防局」の存在のおかげで、犯罪発生率ゼロ状態が達成されている。そういう世界です。予知能力者の「予言」にしたがって、殺人や強盗などに及びそうな潜在犯罪者を事前に検挙してしまう。したがって、犯罪が発生する余地がないのです。
この映画の場合、事前検挙は予知能力者の技能に基づいて行われます。ですが、ビッグデータ時代となった今、もし「マイノリティ・リポート」をリメークすることになったら、筋書きはどうなるでしょうか。
今なら、何も予知能力者の特殊技能に頼る必要はない。市民一人一人について、膨大な個人情報が存在する。それらをすべて犯罪予防局の手元に集約してしまえば、どんなシミュレーションだって、できてしまうでしょう。
人々がネット上で何を次に注文するか。それが予測できるなら、その同じ人々がどのような犯罪を犯しそうか、ということについても、予測できないことはないでしょう。ある傾向や特性を持つ人間が、ある環境の下に置かれればどのように反応し、どのように行動するか。十分に大量のデータがあれば、それなりの精度や確度をもって答えを出すことはできそうです。
さらにいえば、そのような振りをすることは容易にできます。「これだけのデータをこのように解析した結果、あなたは、何年何月何時何分に、ある人を殺害することになっています。だから、今、あなたを事前逮捕します」こんな風に言われてしまうかもしれない。
実際に、そのような計算が行われたのか。行われたとして、その答えにどれだけの信ぴょう性があるのか。それらのことについて、逮捕される側にはチェックする術(すべ)がない。そんな世の中が来たら大変です。
「マイノリティ・リポート」のリメークはやめておいた方がいいですね。誰かが模倣作戦に乗り出すといけません。