米中貿易戦争の本格到来。この雰囲気が濃厚になってきましたね。果てしなき泥仕合は一体どこまで行ってしまうのでしょう。
ところで、皆さんは「わがままな大男」のお話をご存じですか? 文学世界の大鬼才、アイルランド生まれのオスカー・ワイルドが書いた童話です。
わがままな大男は、広くてとても美しいお庭に囲まれた大きなお家に住んでいます。素敵なお庭は、近所の子供たちにとって理想の遊び場。大男がお留守の間、みんな嬉々としてこのお庭に大集合していました。
そこに帰宅した大男は大激怒、「侵入者は厳罰に処す」という看板を立ててしまいます。僕の庭は僕のもの。僕だけのもの。僕のお庭では僕しか遊べない。誰ともシェアなんかするものか。そんなの当たり前じゃない。わがままな大男には、そうとしか考えられないのです。
ところが、こうして子供たちを締め出してしまった結果、大男のお庭に大異変が発生しました。春が来なくなってしまったのです。塀の外は春爛漫。でも、大男のお庭では極寒の冬が続きます。いつまで経っても真冬です。雪と霜が大喜びではしゃぎまくり、北風さんや霰さんをご招待してしまいます。おかげで、大男のお家は煙突は折れるわ、屋根瓦は全部剥げ落ちるわ。悲惨な状態に陥ってしまいます。
大男がすっかり落ち込んでいると、ある日、突然、お庭に春の気配が訪れます。どうしたのかと窓の外を見てみれば、何と、子供たちが塀の小さな穴から忍び込んで、お庭の木に登って遊んでいるのでした。鳥たちも、子供たちに「お帰りなさい」の歌をさえずり、大喜びで飛び交っています。大男も歓喜して、お庭の景色に見とれます。そして、ちょっとびっくりします。なぜなら、広いお庭の一つの片隅だけが、まだ冬なのです。
どうしたことかとよく見てみれば、そこに生えている木の下で、小さな小さな男の子が泣いています。小さすぎて、木に登ることが出来ないのです。すっかり反省モードになった大男は、そっとお庭に出ていって、その小さな小さな男の子を抱き上げて、木の上の高い枝に座らせてあげます。すると、大男の出現で逃げてしまったほかの子たちも戻ってきます。そして、お庭中が春真っ盛りとなるのです。
反省モードに入ったところで、大男はお庭の周りの塀を撤去することにしました。全面開放型のお庭にしたのです。これで、二度と再び、万年冬状態に陥る心配はなくなりました。
大男が抱き上げた小さな小さな男の子は、実はイエス・キリストの仮の姿でした。そして、最終的には、すっかり心を入れ替えてわがままではなくなった大男を天国に連れて行ってくれるのです。
21世紀版のわがままな大男さんも、たまにはオスカー・ワイルドを読んでみるといいと思います。夏休みの課題図書にするといいでしょう。