グリーンウォッシュ(greenwash)。皆さんはこの言葉をご存じですか? 最近、海外の新聞紙上などにちょくちょく登場するようになっています。ホワイトウォッシュ(whitewash)という元からある言葉をもじったものです。
ホワイトウォッシュというのは、日本語で言えば「白塗りする」という感じです。汚れたもの、怪しげなものの上にべっとりおしろいを塗りたくることで、ごまかしてしまう。糊塗(こと)するという意味です。政府や企業が都合の悪い記録をシュレッダーにかけたりするのも、ホワイトウォッシュ行為です。公開せざるを得ない資料の要所要所を塗りつぶすのは、ブラックウォッシュ……いやいや、こういう言葉はありません。少なくとも今のところは。もっとも、そのうち使われ始めるかもしれませんね。
ブラックウォッシュに先んじて出て来たグリーンウォッシュ。その意味するところは、いかにも環境保全に役に立つことをやろうとしているような仕立てをでっち上げることで、投資企画や開発プロジェクトに融資や投資をおびき寄せようとする手口です。いわば緑の隠れ蓑をまとった詐欺的資金調達です。最近、こういう行為が増えているのです。そこまでいかずとも、実際には何もしていないのに、いかにも自然保護や環境改善に貢献しているようなことを自社の事業報告書でうたい上げるような行為も、イメージアップのためのグリーンウォッシングです。
こうした緑の隠れ蓑作戦をしっかり取り締まっていこうというので、この度、EU(欧州連合)が「持続可能性保持行動に関する指針」というものを発表しました。「グリーン検定のための規則集」と言い換えてもよさそうです。何をもって環境保全投資(グリーン投資)と言うか。どんなエネルギーをグリーンエネルギーとみなすか(この場合、グリーンはクリーンに通じるという感じですね)。どこまで再生可能性を追求していれば、「グリーン」のお墨付きを得られるのか。これらのことについて、EU域内共通のルールを設けようというわけです。
EUの「緑化計画」はこれだけにとどまりません。何と、中央銀行の担当領域でも、環境重視を公式方針に織り込もうとしているのです。EUの中で、単一通貨ユーロを共有しているユーロ圏19カ国のために、中央銀行業務に携わっているのが、ご承知の通り、ECB(欧州中央銀行)です。このECBの新総裁に2019年11月から就任しているのが、クリスティーヌ・ラガルド前IMF専務理事です。新総裁は、ECBが金融政策の一環として国債を購入する際にも、環境保全に注力する国の国債を優先するという方針を打ち出しました。こうなってくると、グリーンウォッシュ撲滅対策がことのほか重要になってきますね。成り行きが大いに注目されるところです。
日本の政治と政策は、このところ、もっぱら、ホワイトウォッシュやブラックウォッシュばかりにまみれている観が濃厚です。これにグリーンウォッシュまで加わるようだと、たまったものではないですね。要注意。