安倍晋三首相が辞任しました。後任は、菅義偉現官房長官になることがほぼ確実になっています。自民党内の虚々実々の派閥間攻防の中で、こういうことになってしまいました。
菅氏は、単なる後任に止まらず、安倍政治の後継者であり承継者たることを前面に打ち出しています。「アベノミクス」についても、その承継・強化を打ち出しています。
となれば、この間、ひたすら「打倒アホノミクス」を掲げて頑張ってきた筆者も、引き続きこの構えで政策批判を展開していくことが出来そうです。改めて気合を入れ直さなければいけません。安倍退陣で攻撃の的を失い、喪失感で体調を崩す心配もなさそうです。ただ、アベ首相からスガ首相に代わるわけですから、「アホノミクス」もネーミングは「スカノミクス」に変えた方がいいかなと考えています。いずれにせよ、アホやスカな経済運営はもういい加減にしてもらいたいですね。
ですが、それをいくら彼らに言ってもせんないことです。アホでもスカでもないまっとうな経済政策を展開してくれる人々が、政策責任を担うようになるまでは、どうにもなりません。
その日を待ちわびつつ、我々は、そもそも、アホでもスカでもないまっとうな経済政策とは、どのような経済政策なのかを見極めておかなければいけません。今の日本経済は、どのような経済政策を必要としているのでしょうか。現状において、どのような経済政策が日本経済に関するまっとうな経済政策だと言えるのでしょうか。
端的に言って、それは分配に軸足を置いた経済政策です。経済活動を一つの三角形に見立てれば、その三辺は成長と競争と分配です。多くの政策運営者たちが、とかく、この三辺の中で最も重要なのが成長の辺で、成長の辺をより強く、より長くすることが常に最優先課題になると思い込みがちです。ですが、これは違います。経済活動の三角形のどの辺が重視されるべきかは、経済の体質や発展段階によって、時々刻々と変化していきます。
若い経済は、確かに成長を必要とします。経済の規模をどんどん大きくしていかなければ、雇用を造りだし、人々に所得を得る機会を提供することが出来ません。生まれたての赤ちゃんにとって、大きくなること、成長することが最優先課題であるのと、同じです。
ですが、今の日本経済はもはや生まれたての赤ちゃん経済ではありません。それどころか、すっかり成熟した大人に育ちあがっています。そこまできているのに、なお、成長を最優先していたのでは、バケモノのように巨大化していくばかり、環境に負荷をかけるばかりで、ロクなことにはなりません。
今の日本経済は、どうしても成長が必須な段階をもう卒業しているのです。今の日本経済の三角形において、最も重要な位置づけにあるのが、分配の辺です。成熟した大人の経済に必要なのは、さらに大きくなることではありません。大人の体にとって大切なのはバランスです。バランスの取れた経済実態。それを、今日の成熟経済ニッポンは必要としているのです。
ところが、今の日本経済は大きくバランスを崩しています。こんなに豊かな経済なのに、そのただ中に、貧困問題がある。つまり、富の偏在、分配の歪みというアンバランスを抱え込んでしまっています。これを是正することこそが、日本経済の三角形を均整の取れた麗しい形の三角形にするために求められる対応です。お金持ちばかりがよりお金持ちになり、貧困層はどんどん取り残されていく。この状態を是正するために、金持ち増税などを通じて、所得再分配機能を強化する。これが、今の日本経済が待望しているまっとうな経済政策です。
このことを理解出来て、この理解に基づいて動く実行力を備えている。そのような政策集団の出現をひたすら切望します。