日本のNPOバンクのネットワーク組織である「全国NPOバンク連絡会」によると、日本には2021年1月時点で14のNPOバンクがある。未来バンクは、その先駆けであり、最も規模が大きい。
NPOバンクは、市民やNPOが組合員となり、1口数万円単位(未来バンクの場合は、最低1万円)の出資をして資金を集め、地域社会や福祉、環境保全のための活動などを行うNPOや個人に、低利(1~5%程度)で融資する。普通の銀行に「預金」するのと異なり、「出資」であるため、出資者には出資金に対する元本保証がなく、利息も付かなければ、自由に引き出すこともできない。だが、何よりも自分のお金の運用方法がはっきりと見えることが、魅力だ。NPOバンクに出資すれば、自分のお金が地域社会の活性化に役立つうえ、グローバル化する世界で気候危機や格差拡大を助長するような事業に使われる心配もない。
未来バンクでは、出資者に「環境、市民事業、福祉、健康住宅、森林保全のためになる活動や(それを)応援したい人にお金をまわし、住みよい地域社会づくりに活用されます」(未来バンクウェブサイト)と、約束している。その理念に賛同する人々が出資しており、2021年6月30日時点で、出資する組合員は546名、出資金は1億9600万円以上に達している。
「出資者の大半は、お金の使われ方について、このままじゃいけないと感じている人たちです」(田中さん)
そんな出資者の一人、大河内秀人さん(64)は、「グループKIKI」で田中さんと共に活動していた仲間だ。江戸川区と文京区にある2つの寺の住職で、若い頃から国際協力にも関わってきた。日本のODAのあり方に疑問を抱き、田中さんたちと日本政府の海外援助の資金源について調べる中で、市民の手による金融の必要性を強く感じた。
「海外でも現地の市民としっかりとつながって活動しているNGOのほうが、よい仕事をしています。国内でも、もっと人と人とのつながりに基づく事業にこそ、お金を使うべきです」
出資者で、見樹院・寿光院の住職、大河内秀人さん。(見樹院にて)撮影:篠田有史
出資金に託された人々の意志を糧に、未来バンクは、この27年余りの間に、430件以上、累計14億4730万円を超える融資を行ってきた。その融資先や事業内容は、ウェブサイトやニュースレターで紹介されている。出資者や活動に関心を持つ市民に「顔の見える」組織であることで、信頼を高め、同時に融資を受ける側の責任感も引き出している。
信頼に基づく融資
未来バンクの具体的な融資対象事業には、環境保全に関わるもの、食の自給や地産地消に関わるもの、風土を生かした地域・まちづくりに関わるもの、子育てや介護に関わるもの、エコロジー住宅や地場木材を利用した住宅購入、などがある。
融資を受けるには、未来バンクの組合員であることが条件だ。融資を受けたい個人・団体は、融資希望額の10%程度の出資金を出して、組合員になる。一度組合員になれば、基本的には何度でも融資を申請できる。
融資の種類は5つあり、それぞれ限度額や金利、融資期間が異なる。ただし、融資額の上限や融資期間は、場合によって理事会などで話し合い、柔軟に対応している。
みらいバンクの融資
融資の種類 | 融資額 | 金利 | 融資期間 |
つなぎ融資 | 最大1000万円まで | 1.6% | 最長1年 |
住宅融資 | 最大300万円まで | 1.6% | 最長15年 |
住宅設備購入融資 | 最大200万円まで | 1.6% | 最長10年 |
一般融資 | 最大300万円まで | 1.6% | 最長5年 |
特別担保提供融資 | 担保となる出資金の10分の8まで | 1% | 最長10年 |
つなぎ融資とは、すでに決定している国などからの補助金や事業受託費が交付されるまでの間、資金を補うものだ。エコロジー住宅への融資の場合なら、ほかの金融機関から住宅ローンが提供されるまでのつなぎとなる場合もある。
住宅融資や住宅設備購入融資は、文字通り、住宅やそこに設置するソーラーパネル、ペレットストーブなどの設備の購入のためのものだ。
ユニークなのは、特別担保提供融資。これは、融資を受ける人(債務者)以外の組合員が、自分の出資金を未来バンクに「担保」として提供し、行われる融資だ。未来バンクが特定の事業に融資をする際、リスクが高いと判断した場合には、組合員に対し、出資金を「担保」として提供してくれるよう呼びかける。この時、特別担保提供融資の額は、担保となる出資金の10分の8を超えることはできないが、金利は1%に下がる。つまり、組合員が「信頼」を担保に、融資を希望するほかの組合員事業者を応援できるわけだ。
融資の申請をすると、まず未来バンクの理事とアドバイザーの計8人の中から選ばれた担当者(2、3人)と、面談やメールなどを通して細かいやりとりをする。
「1回の面談だけで融資を決定することはありません。最終的には、8人全員で審査します」
と、業務執行理事の佐藤隆哉さん(40)は説明する。ちなみに佐藤さんは会社員で、「天然住宅」を建てたのをきっかけに、2019年から未来バンクに関わっている。東日本大震災をきっかけに、エネルギーや食、健康といった問題に関心を持ち始めたそうだ。
これまでに未来バンクから融資を受けた人たちは、田中さんや佐藤さんたちの問題意識と活動に共感し、その信頼に応える形で事業を実施している。