そろそろ帰りのバスの時間だ。バス停に行くと、数人並んでいる。やはりバスで移動する人もいる。みな車というわけではないのだ。バスは無事に来て、一番後ろの席に座った。体は疲れ切っていた。前日のライブ、その前に行った読谷、金武(きん)、コザ。歩き回った。金武、コザについては書けなかったが、他の街と変わらず、飲み屋に入り、店の人の話を聞き、常連さんと少し話す。ガラケーで写真を撮らせてもらい、あら、まだガラケーなの、なんてやり取りがある。金武の郵便局の近くにあった小学校、丘の上から海が見えた。下校中の小学生が元気よく走っていた。スナックに沖縄そばのノボリ。入り口は暗い。恐る恐る入ると、スナック。昼間のスナック。沖縄そばを、とママに注文。基地の話を少し聞く。こっちはもらった、こっちはもらってない、そういう話はよくある。補助金の話だ。なんだかなあと思いながらそばを啜る。汁までうまい。ただの土、ただの大地じゃねえか、丘じゃねえか、海じゃねえか。外へ出ると眩しい。暗がりのスナックにいたから外が眩しすぎる。金武の小学生たちの笑顔が印象に残ってる。はしゃぎ続けるべきなんだ。
那覇に戻り、腹が減っていた。平和祈念公園で2回沖縄そばを食べたが、それ以外は食べていない。宿の近くを歩き回り、飲み屋があったので入った。男性が2人で飲んでいた。1人はスーツで、1人は旅行者という感じだった。沖縄もアメリカじゃなくイギリスに占領されてたら、車社会じゃなく、鉄道が通ってただろうね。そんな会話が聞こえてくる。明日は東京へ帰る日だ。最後に沖縄っぽいものを食べよう。女将さんおすすめの料理をいただく。沖縄に何をしに来たのだったか。とにかく歩いた。ただそれだけ。店に入れば料理を出してくれて、飲み物を出してくれる。話を聞けば、何か話してくれる。沖縄ならそれが沖縄の話になる。他の街なら、他の街の話になる。それだけのこと。店の人たちはみな優しく接してくれた。常連のおじさんと店のママが話している雰囲気を感じられたらそれで十分。深掘りはしない。ちょい掘りはするけど、こねくり回したりはしたくない。ただ、その表情は、いただく。その人と過ごした短い時間、確かな時間、がそこにあるから。じゃなきゃ旅をする意味がない。
お会計をすると、女将さんがこれお土産にどうぞ、とサーターアンダギーを持たせてくれた。大好物のサーターアンダギーだ。少し小ぶりのアンダギー。宿で食べようか、歩きながら食べようか。街はまだこれからという感じで、若い人たちがはしゃいでいた。金曜日の夜だった。