いざレースになるとボートのエンジンがけたたましい音を立てる。これに魚はどう対処するのか。興味が湧いてレース中魚を見てみることにした。結果は、まったく動じていなかった。10メートルくらい先を、ものすごい音を立てて6艇のボートが走っていったが、魚はゆったり泳いでいた。あの音は水の中には聞こえないのか。
しかし寒い、寒すぎる。最終レースまでやっていたら夜も更けてしまう。無料送迎タクシーの時間を聞き、それに乗って大村駅へ行くことにした。
タクシーは相乗りで男性が1人先に乗っていた。競艇は難しいですね、と話しかけると、競艇は大きいの当てようとするとダメですね、配当がカタいですから、それを取って重ねていくことですね、と返してくれた。あのおじさんにいつか再会する時が来るのだろうか。人生というのは風のようなものなのかもしれない。大村駅で別れた。
大村駅は初めてだった。ここにほんとに祖父さんが住んでいたのだろうか。祖父さんの背中を探そう、そう思った。駅舎は古く、木造だった。これがよかった。建物が木造なだけで、そこにいる女学生たち、タクシーに風情が出てくるから不思議だ。