休校をやめた最大の理由は、「保護者の多くが学校内の学童保育の利用を希望していて、授業を継続した場合よりも児童の間の接触が増える懸念があるためだ」としています。感染リスクを下げるため、学校の教室を学童保育でも利用できるようにする措置を取るところも出ていますが、そうなると何のために休校にしたのかよく分からなくなります。
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また、そこで働く学童職員の状況も深刻です。全国学童保育連絡協議会が2012年および14年に実施した実態調査結果によれば、学童職員は正規職員が少なく、多くが非正規職員(非常勤・臨時・嘱託・パートなど)で、約半数の指導員は年収150万円未満となっています。学童職員の皆さんの労働条件はあまりに劣悪で、子どもたちを預かる責任に見合ったものでは全くありません。そこに新たな負担を加えるのが、今回の「全国一斉休校」要請なのです。
安倍首相の「全国一斉休校」要請は、憲法や学校保健安全法に関わる問題点に加えて、若者の貧困、増加する共働き世帯や一人親世帯の現状、利用人数が増加した学童保育と学童職員の劣悪な処遇などを十分に認識し、配慮したものとはなっていません。そう考えると、「全国一斉休校」要請は、「子どもたちの健康と命を守る」と言いながら、実際には子どもや若者に犠牲を強いているように思えます。
政府が率先してすべきなのは、何よりも検査体制の整備と感染者の隔離であって、子どもや若者の学ぶ権利を奪ったり、行動を制限したりすることではありません。
3月4日、文部科学省は同日午前8時時点で休校している市区町村立小学校が全体の98.8%、市区町村立中学校と都道府県立高校がそれぞれ99.0%に上るとする調査結果を発表しました。大半の学校が休校となる一方、全国の市区町村立小中学校と都道府県立高校、都道府県立特別支援学校のうち、栃木、群馬、埼玉、京都、兵庫、岡山、島根、沖縄の8府県で計399校が休校を見送る方針を示しています。休校を見送る私立学校もあります。
感染リスクを冷静に見極めながら、「若者のミカタ」として子どもや若者のために自主的な判断をする自治体・学校が増えることを期待しています。