アメリカの映画芸術科学アカデミーが主催する映画賞の第92回目。2020年2月9日に授賞式が行われ、24部門ある賞のうち最大の栄誉となる作品賞は、格差社会を風刺した韓国のポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』(邦題、以下同)に与えられた。同作品は併せて監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞した。
主演男優賞は、『バットマン』の悪役を主人公にした『ジョーカー』でジョーカーを演じたホアキン・フェニックス。主演女優賞は『ジュディ 虹の彼方に』で伝説的女優ジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガー、助演男優賞は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラッド・ピット、助演女優賞は『マリッジ・ストーリー』のローラ・ダーンが、それぞれ受賞した。
作品賞には前述の『ジョーカー』や第1次世界大戦の戦場を舞台にした『1917 命をかけた伝令』(撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門を受賞)など、注目を集めた作品がノミネートされていたが、『パラサイト』が英語以外の作品としては史上初となる受賞を勝ち取ったことは、大きな話題を呼んだ。
『パラサイト』は、19年にはカンヌ国際映画祭で韓国映画としては初の最高賞パルムドールを受賞しており、芸術性と娯楽性を兼ね備えた作品として高い評価を受けていることで今回のアカデミー賞4冠受賞となったが、背景には、主催の映画芸術科学アカデミーが近年、同賞の候補が白人や男性に偏っているとの批判を受けて、世界の映画人に大量の招待状を送付して新規会員を増やすなどして選考メンバーを多様化したこともあると指摘されている。
日本との関連では、日本出身のカズ・ヒロが『スキャンダル』で2度目となるメイクアップ・スタイリング賞を受賞したほか、主題歌賞にノミネートされたアニメ映画『アナと雪の女王』の日本語版吹き替えで主人公エルサ役を演じた女優の松たか子が授賞式に登壇。世界のエルサ役9人と共に主題歌を歌った。
第92回の主な賞は次の通り。
◇作品賞『パラサイト 半地下の家族』
◇監督賞ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)
◇主演男優賞ホアキン・フェニックス(『ジョーカー』)
◇主演女優賞レネー・ゼルウィガー(『ジュディ 虹の彼方に』)
◇助演男優賞ブラッド・ピット(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)
◇助演女優賞ローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)
◇脚本賞ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン(『パラサイト 半地下の家族』)
◇脚色賞タイカ・ワイティティ(『ジョジョ・ラビット』)
◇撮影賞ロジャー・ディーキンス(『1917 命をかけた伝令』)
◇編集賞(『フォードvsフェラーリ』)
◇美術賞バーバラ・リン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
◇衣装デザイン賞ジャクリーン・デュラン(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)
◇メイクアップ・スタイリング賞(『スキャンダル』)
◇作曲賞ヒルドゥル・グーナドッティル(『ジョーカー』)
◇視覚効果賞『1917 命をかけた伝令』
◇音響編集賞『フォードvsフェラーリ』
◇録音賞『1917 命をかけた伝令』
◇歌曲賞「(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン」(『ロケットマン』)
◇長編ドキュメンタリー賞『アメリカン・ファクトリー』
◇長編アニメ賞『トイ・ストーリー4』
◇国際映画賞『パラサイト 半地下の家族』(韓国映画)
アカデミー賞(第92回、2020年)
92th Annual Academy Awards
イミダス編
2020/06/18