何らかの宗教を信じている親や家族、その宗教集団のもとで影響を受けて育った子ども(「宗教2世」)が、望まない信仰や宗教活動を強いられたり、親に暴力や虐待を受けたり、その教義に基づいて行動に強い制約を受けたりする問題のこと。
安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件で、犯行の動機として、母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の信者として多額の献金をしていたことなどに対する容疑者の怒りがあったとして、宗教団体の活動をめぐって信者の子どもが経験する苦しみが注目されるようになった。
宗教2世問題として取り上げられるのは、一つには行動の制約がある。例えば恋愛や結婚、進学や就職などの進路について、本人の意向が親や教団によって制約されるなど。テレビを見ることや漫画を読むことも禁止され、異性と手を握ることも許されないといった例もある。もう一つは、親や教団を離れることができても社会復帰をするのが困難になること。親や親族と断絶することで就職や部屋を借りることも難しく、公的機関に助けを求めても、「宗教問題には介入できない」などと対応してくれないこともある。
2022年11月1日、「社会調査支援機構チキラボ」(荻上チキ所長)が「宗教2世」についてのウェブアンケート調査結果を発表した。回答は1131件。それによると、回答者の89.9%が家族から「儀式等への出席」を求められ、34.2%が「教団への献金」を求められていた。脱会した回答者に対する「脱会の際にどのような問題があったか」という質問には、「家族との関係が悪化した」という回答が58.3%、「宗教的価値観が残っているため、一般社会で生きることに罪悪感や背徳感を味わうことがあった」という回答が45.9%に上った。
回答者が希望する今後の施策としては、「子どもでも親や教団から安全に離れられる制度の整備」が73%、「社会問題を起こした宗教団体への解散命令や法人格の取り消し」が71.9%だった。
厚生労働省は、2022年10月6日付で、全国の自治体に対して、信仰や宗教活動を理由としていても児童虐待に当たる行為はあり得るとして、子どもの側に立って判断し、対応するようにとの通知を出した。具体的には、身体的暴行を加える、適切な食事を与えない、重大な病気になっても適切に医療を受けさせない、言葉による脅迫、子どもの自尊心を傷つけるような言動を繰り返すなどの精神的な虐待などを例示している。
宗教2世問題
イミダス編
2022/11/28