刑務所や少年院を出た人の立ち直り(更生)を支援し、併せて犯罪予防の啓発活動を行う非常勤の国家公務員。ただし支給されるのは通信費や交通費などの実費のみで、一般公務員のように国家公務員法も適用されないので、実質的には無報酬の民間人ボランティアといえる。
保護司制度の起源は1920年代にさかのぼるが、現在の制度は1950年に保護司法の公布で創設された。更生を支援する「更生保護」や犯罪予防活動は、法務省が各地域に置く地方更生委員会および保護観察所に所属し、医学や心理学などの専門的知見を持つ保護観察官の担当で、保護司はその補佐的役割という法的位置付けとなっている。
保護司となる資格として求められるのは、人格・行動について社会的信望があること、熱意と時間的余裕があること、生活が安定していること、健康で活動力があることで、保護司選考会の意見を受けて法務大臣が委嘱する。保護司は関係法令の学習や事例研究など、経験年数に応じて研修を受けなくてはならない。任期は2年で再任は可能だが、78歳を超えると認められない。
保護司は、犯罪や非行をした人が更生を図る上での約束事(遵守事項)を守るよう指導するとともに、心の支えとなって生活の相談に乗り、関係者との調整を図り、就職の支援などを行う。また犯罪や非行の予防のために毎年7月を「社会を明るくする運動」強調月間として講演会やシンポジウム、スポーツ大会などを行う。
保護司を務める人の職種は、会社員や農林水産業、販売、土木建築、宗教家、主婦など多岐にわたる。活動内容の7割を少年犯罪が占めている。ただ、平均年齢65.4歳と保護司の高齢化が進んでいる。また人数も不足しており、定員の5万2500人に対して2025年1月現在で約4万6000人となっている。
保護司は日本独自の制度だが、日本政府はこの制度の海外への「輸出」を推進してきた。1976年にはフィリピンで保護司制度が始まっている。2021年に京都で開かれた第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)では、そのサイドイベントとして「世界保護司会議」が開催された。2025年5月23日には、国連犯罪防止刑事司法委員会で採択された再犯防止に関する指針に、保護司のような地域ボランティアの重要性が盛り込まれた。