通常の消防車両では走行が困難な場所でも活動できる、全地形対応の水陸両用消防特殊車両。赤い塗装と、両生類の「サンショウウオ」を意味する英語「salamander」にちなんで「レッドサラマンダー」と名づけられた。
シンガポールの企業「STキネティクス」が製造し、日本では消防車両などを手がける企業「モリタ」が販売代理店をつとめる。全長約8.9メートル、全高約2.7メートル、全幅約2.3メートル、重量約13.5トン(規格に関する数値は「モリタ」公式ウェブサイト参照)。
油圧シリンダーで前後2両が連結されており、2両とも車輪のかわりに、ブルドーザーなどと同じような「クロウラー」(履帯〈りたい〉、無限軌道とも)と呼ばれる走行装置が装備されている。これにより、泥地、砂地やがれきの上、段差や溝がある悪路でも走破が可能になっており、最大傾斜約27度の斜面を昇降できる。また高い気密性と耐水構造により、水深1.2メートルまで走行可能。最高速度は時速約50キロメートル。
東日本大震災(2011年)後の救助活動が難航したことを機に導入が検討され、2013年、総務省消防庁により岡崎市消防本部に配備された。配備先である岡崎市は、本州のほぼ中央に位置しており、交通の便がよく全国各地に出動しやすいことや、津波の被害を受けにくい地形などを理由に選定された。2017年7月の九州北部豪雨の際に初出動し、大分、福岡両県の山間集落などにおける救助活動に従事した。2018年7月の西日本豪雨では、岡山県倉敷市に派遣されている。2023年6月、台風2号などに伴う豪雨で愛知県東部が冠水した際には配備先の岡崎市で活動した。
また、2021年には大阪市消防局に同様の性能を持つ特殊車両(愛称は「赤いカバ」を意味する「レッドヒッポ」)が配備され、翌年から本格運用を開始している。