現行犯に限って可能な、一般人による逮捕。逮捕には、裁判官が事前に発する逮捕令状を示して行う通常逮捕、被疑者が殺人などの一定の重罪を犯した疑いが十分にあり、逮捕の緊急性がある場合に逮捕令状なしで逮捕する緊急逮捕、逮捕令状が不要な現行犯逮捕がある。このうち通常逮捕と緊急逮捕は、検察官、検察事務官、司法警察職員(警察官)のみが行えるが、現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条で「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定められており、一般人にも逮捕権が認められている。現行犯人とは、犯行中か犯行直後の者を指す。また、犯人として追いかけられている、盗品や凶器、服の血痕などといった犯罪の証拠が見てとれるなど、犯行後間もないと明らかに認められるときは準現行犯として逮捕できる。ただし、現行犯であっても、過失傷害罪などの軽度の犯罪(30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪)ならば、犯人の住居氏名が不明であるか、犯人が逃亡する恐れがなければ、常人逮捕を行うことはできない。
また、常人逮捕の後は、速やかに検察官、警察官などに身柄を引き渡さなければならない。なお、犯人を取り押さえる際に殴打してけがをさせると傷害罪に問われる場合がある。このほか、一般人がそうと知らずに誤認逮捕してしまった場合、逮捕の手続きが適切であれば罪に問われることはないが、損害賠償を請求される可能性もあるため、対応には注意が必要である。常人逮捕は、電車内などにおける痴漢行為に対し、迷惑行為防止条例違反などの容疑で行使されることが多い。また、2016年3月28日には、福岡市で女性2人に斧を振り下ろして殺害しようとした男が、居合わせた男性によって殺人未遂容疑の現行犯で常人逮捕された。
(2016.4.15)
常人逮捕(私人逮捕)
イミダス編
2023/11/22