「無人アセット(装備品)」を用いた日本の防衛能力のこと。無人航空機(UAV)、無人水上艇(USV)、無人潜水艇(UUV)、無人地上車両(UGV)などがある。
2022年12月16日に改定された「安保3文書」――外交・防衛の基本方針を定める国家安全保障戦略、それを踏まえて防衛力の水準を定める国家防衛戦略、5年間で整備する装備や防衛費などを定める防衛力整備計画において、無人アセット防衛能力の強化が定められた。
国家防衛戦略は、「我が国の防衛上必要な7つの機能・能力」として、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力・国民保護、持続性・強靱性を挙げている。そのうち、無人アセットについては、比較的に安価で人的消耗を抑えることができるなどの利点があり、これをAI(人工知能)などと組み合わせることで「部隊の構造や戦い方を根本的に一変させるゲーム・チェンジャーとなり得る」と位置付けている。
同戦略は、「今後、おおむね10年後までに、無人アセットを用いた戦い方を更に具体化し、我が国の地理的特性等を踏まえた機種の開発・導入を加速し、本格運用を拡大する。さらに、AI等を用いて複数の無人アセットを同時制御する能力等を強化する」としている。
こうした方針に基づき、防衛力整備計画では、洋上監視に使われる滞空型無人機や艦載型の無人機、目標情報を収集する偵察用無人機、離れた場所にある基地や艦艇などに補給品を送る輸送用無人機を導入し、攻撃用無人機、無人水上艇、無人潜水艇などの開発・整備を行うとしている。
22年12月には航空自衛隊三沢基地に偵察航空隊が新設され、米国製無人偵察機「グローバルホーク」が配備された。また、海上自衛隊の無人偵察機「シーガーディアン」の試験運用が同年10月から八戸航空基地で始まり、24年4月からは鹿児島県の鹿屋航空基地でも行われる。
自衛隊は従来、無人機を重視せず、中国などと比べてその導入が遅れてきたため、無人アセット防衛能力の強化は大きな転換となる。
しかし、無人機については、モニター画面越しに操作が行われることからゲーム感覚となり、人命を奪っているという感覚を失いかねないという倫理的な問題が指摘されている。
また、AIと組み合わせた無人攻撃機の利用が進めば、人間が関与しないままに自律的に攻撃目標を設定し、攻撃する「自律型致死兵器システム(LAWS)」、いわゆる殺人ロボットに発展しかねないとする懸念もある。