2020年頃から首都圏を中心に急増しているラーメン業態。赤い軒先テントや看板を掲げ、「○○ちゃんラーメン」といった店名が多いことから総称して「ちゃん系」と呼ばれる。見た目は昭和の大衆食堂や町中華を思わせるノスタルジックな佇まいだが、その多くは令和に誕生した新店である。
2020年に東京・神田駅のガード下にオープンした「神田ちえちゃんラーメン」が原点となり、店舗が拡大している。その後、「ちゃんのれん組合」が発足し、加盟店には営業スタイルや技術ノウハウの教育のほか、原材料の共同購入や従業員のあっせんも行われている。
特徴は、豚清湯(チンタン)のショッパウマ(しょっぱくて旨い)なスープに、やわらかめに茹でた中太麺、注文ごとに切り分けるチャーシュー。メニューは中華そば、もしくはそれに準ずる数品に絞られ、白飯とともに食べることを前提に味が設計されている。赤いカウンター、簡素な内装、どこか既視感のある空気感。しかしそれは単なる懐古趣味ではなく、塩味の強度や脂の厚み、提供スピードに至るまで、現代人の生活リズムと胃袋に最適化された設計思想の産物だ。
「ちゃん系」の強さはノスタルジーそのものではない。説明不要で、理屈抜きに旨いという点にある。情報過多の時代にあって、店のウンチクを読まずとも、写真を撮らずとも、ただ腹をすかせて入り、黙って食べれば確実に満足できる。この“ノーリーズン”の快楽は想像以上に強い。なぜか店内にビートルズが流れている店が多いのも象徴的で、往年の洋楽をBGMに啜る一杯は、昭和の記憶と令和の現実を心地よく接続する。
さらに、調理工程が比較的シンプルでオペレーションの再現性が高い点も拡大の要因だ。初訪問でも外さない安心感があり、世代や性別を問わず支持を広げている。ブームにとどまらず、やがては街角のインフラとして定着していく可能性も高い業態である。