個がつながり合う、ジャーナリズムの未来
三浦 今メディアへの志望者がどんどん減っているでしょう。首相会見で権力者のご機嫌をとるような質問に対して、絶望している人たちは多いと思います。僕が、福島での首相会見にもぐりこんで、事前通告なしで「福島の原発はアンダー・コントロールと言った、あなたの発言の真意を教えてください」という趣旨の質問をしたとき、NHKではその部分がバッサリと切られて、放送されなかった。記者が会見で挙手して質問するという、本来は極めて普通のことが、今や「異常事態」として取り上げられてしまう。
阿部 東京新聞の望月衣塑子さんが目立つのも、同じことですね。わかるまで質問するという記者として基本的なことをやっているだけなのに、それが異例なこととして政府官僚に目をつけられて、集中的に排除される。メディア内でも望月さんへの評価は割れているけど、記者であれば、たとえ流儀の違いはあっても、「質問をさせるべきだ」という望月派につかないのは、おかしいですよ。
三浦 望月さんはあれほどのバッシングを受けても質問し続けている。それによって、自分も勇気づけられたし、声を上げようとする記者が各地で立ち上がるようになってきていると思います。
阿部 そうですね。今こうして三浦さんとの対談が実現しているように、現場の記者同士がつながれるようになったことは、これからのメディアの未来にとって希望なんじゃないかと思っています。
三浦 これからのメディアは、組織に囚われない個の時代になっていくと思います。それぞれの個が共通認識を持ったときには、連帯して、SNS上ですぐにつながることができる。そうした個々のつながりの力で、衰退するジャーナリズムやノンフィクションを「点」ではなく「線」で、できれば「面」で支えていく。そんな時代が実はもう来ているのだと感じています。