木々の葉が全て落ちて、アトリエの周りはすっかり冬景色。雑木林は小山になっているので、ほんの少し駆け登るだけで景色が開け、南には棚田の風景、北には比良山(ひらさん)が望めます。初冠雪の頃になると、山の頂(いただき)が白く光って、清々しい気持ちになります。
昨年は大きな台風がやってきて、雑木林の木々がたくさん折れました。直径30センチ以上あるクヌギやヤマザクラの木も数本、幹の途中からバッサリと亀裂が入ったものがあります。倒れた木を整理するのは一苦労でしたが、立ち枯れになった木は伐採せずにそのまま残すことにしました。それは、キツツキの仲間のためです。
アトリエにやってくるキツツキたちは、アカゲラ、コゲラ、アオゲラです。アカゲラは、ムクドリくらいの大きさで、オスは後頭部と尾羽根の下に赤い羽毛をもっています。全身が黒と白のはっきりした文様なので、紅色が鮮やかに見えます。木々の間をダイナミックに飛翔しては幹を駆け登り、また、隣の木に飛び移るという、まるで忍者のような身軽さ。アカゲラをアトリエの敷地内で発見したのは20年くらい前になりますが、アカゲラが来るほど雑木林の木々が成長してきたことにとても感動したのを覚えています。
一方、コゲラは、アカゲラに比べると小さく、スズメくらいの大きさでしょうか。黒地に正方形の白い紙をちりばめたような文様をもつ美しい鳥です。フレンドリーで建物の近くにもやってきます。アトリエのアプローチにあるクヌギの並木がお気に入りです。このクヌギは刈り取った稲を干す稲木として管理しているので、高さ2メートルくらいしかありませんが、毎年枝を剪定するため、先端が握りこぶしのような形をしています。木肌がゴツゴツしているせいか、コゲラたちの大好物である越冬中の昆虫たちがたくさんいるようです。
そして、アオゲラは背中を中心に抹茶色をしています。オスの頭部には赤い斑紋もあり、とても印象的です。ハトくらいの大きさがあります。アカゲラやコゲラほど頻繁ではありませんが、アトリエの敷地内で毎年確実に見られます。エノキの実がほんのりと色づく頃、待っていたように現れます。細い枝に逆さになって止まると、枝先がしなってゆらゆらと動くのですが、器用に体や顔をねじって実をついばみます。
アカゲラとコゲラは、アトリエの立ち枯れの木に営巣することもあります。台風で犠牲になったクヌギを始めとする広葉樹は、やがて立ち枯れとなって、彼らに子育ての場を提供することでしょう。自然による被害も、長い目で見れば生態系の中ではなくてはならない現象なのかもしれません。
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