この「現象」は科学的に説明ができます。チューイングガムの弾力性は、ガムベースによって作られており、チクルと呼ばれる植物性樹脂が主成分です。このガムベースは、体温くらいの温度で軟らかくなり、さらに水分には強いという性質があります。だから、チューイングガムは口の中でかむことができますし、唾液で溶けることもないのです。
でも、ガムベースは水には強い一方、油には溶けやすい性質を持っています。チョコに含まれるココアバターなどの油脂と反応して、ガムベースは溶けてしまうのです。ですから、例えば油分の多いポテトチップスと一緒に口の中に入れても、油分と反応してガムは溶けてしまいます。一方で、油分のほとんどない飴(あめ)であれば、一緒に口に入れても大丈夫です。
さて「食べ物の組み合わせ」と言えば、昔から「食い合わせ(食べ合わせ)」の言い伝えがあります。食い合わせとは、いっしょに食べると中毒を起こすと言われている食べ物の組み合わせのことです。例えば、「ウナギと梅干し」「スイカと天ぷら」「かき氷と天ぷら」「キノコとカニ」。いわゆる「おばあちゃんの知恵」の一つですが、これには科学的根拠はあるのでしょうか?
言い伝えられるものには、それなりの理由があります。冷蔵庫がなかった時代には、魚介類はもちろん、果物も野菜も「すぐ腐ってしまう」危険な食品でした。そして、大正から昭和の初めまでは「食あたり」が今とは違って恐ろしい病気であり、赤痢や腸チフスの罹患率、致死率が高かった事情も考えなければなりません。例えば、腸チフスは年間約6万人がかかり、3割近くの人々が命を落としていました。現在では考えられませんね。ですから、昔の人は危険を少なくするために食に関してできるだけ気を遣ったのでしょう。
そのような状況下では、例に挙げた「食い合わせ」はそれぞれ理屈がつきます。「スイカと天ぷら」は、水気の多いものと油もので消化に悪い。「かき氷と天ぷら」も同じく水気の多いものと油もの。「キノコとカニ」は、中毒を起こすかもしれないものと腐りやすいもの。食品の保存環境が悪い時代は、これらは生死にかかわる「食い合わせ」だったと言えます。
では、「食い合わせ」の代表例である「ウナギと梅干し」についてはどうでしょう? これには「脂肪の多いウナギと、未熟な場合は青酸を含むかもしれない梅干し」という組み合わせだから、という一説があります。ただ、一方で現在では「梅干しの酸がウナギの消化促進に効く」「さっぱりした梅干しがウナギには合う」ということで、逆に「好まれる組み合わせ」にもなっています。だからこそ「ついつい食べ過ぎてしまい、おなかを壊す悪い組み合わせ」ということもできそうですが。ちなみに「鯛(たい)の天ぷら」が原因で食中毒死したと言われている徳川家康ですが、がん末期に大好きな「鯛の天ぷら」を食べ過ぎて体調を崩したというのが現在の定説のようです。
このように「食べ物の組み合わせ」も科学を軸にして考えると、改めて食の奥の深さを楽しむことができます。食いしん坊生活がもっと楽しくなりそうですね。