日本で感染する機会が多い主な性感染症にはどのようなものがあるのか。注意したい点や気をつけるべき症状、治療方法などの基礎知識をまとめました。〈監修:尾上泰彦医師(性感染症専門医)〉
*いま注意すべき性感染症や、検査・治療のポイントなど尾上泰彦医師にうかがった、「性知識イミダス:性感染症を正しく理解しよう~怖がりすぎず、パートナーと安全なセックスを楽しむために」もご覧ください。
梅毒
特徴:性行為やそれに類似する行為により、皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマという細菌に感染し、やがて血液を介して全身に散布され、様々な症状を引き起こす全身性の慢性感染症。2015年以降、感染が急増している。検査できるようになるのは感染機会後、6週間以上経過してから。完治可能だが免疫はできないため、何度でも感染する。母体が感染していると、妊娠中に重い合併症や早産、死産を引き起こしたりする可能性があるうえ、胎盤を通して母子感染するリスクは60~80%と非常に高く、子どもが先天性の障害を持ったりすることがある(先天梅毒)。また、HIVの感染リスクを高める可能性がある(他の性感染症も同様)。
年間新規感染者数:6642件(2019年。全数報告)
症状:無症状なことが多く、症状が出ても軽くすむか、しばらくすると自然と消えるため、発見が遅れがちである。
・第1期(~3カ月):感染機会後、早くとも7日以降に梅毒トレポネーマの侵入部位(ペニスの冠状溝、包皮、亀頭部、口唇、大小陰唇、子宮頸部、乳房、乳輪など)に硬結(こうけつ。イボ状の塊のこと)や潰瘍(かいよう。ただれのこと)ができる。感染機会から3週間経つと、梅毒トレポネーマの侵入部位にしこりができたり、足の付け根のリンパ節が硬くなって腫れたりする。いずれの症状も、痛み、発熱はほとんど見られず、数週間で症状が消える。
・第2期(~3年):手のひらや足の裏などの全身に、かゆみがない皮膚症状(梅毒バラ疹、梅毒性乾癬〈かんせん〉など)が出る。口腔内の粘膜に白斑が出る他、脱毛症状が起こることもある。いずれも、数日~数週間で自然と消える。第2期以降、治療しないまま放置しておくと、皮膚や内臓で潜伏して症状が進行し、数年~数十年後、脳や心臓、血管、神経に症状が出る。
定点報告
※感染症法により、地方自治体が定める国内約1000カ所の医療機関には、感染例を保健所に報告することが義務づけられている。
全数報告
※感染症法により、全感染例を保健所に報告することが医師に義務づけられている。
AIDS
Acquired Immunodeficiency Syndrome