近年、乳がんの罹患率が急増している。日本人女性の9人に1人がかかると言われ、がんの中では比較的若い40代後半に患者数の最初のピークが見られるのが特徴だ。乳がんにより30代で亡くなった著名人もおり、「怖い病気」というイメージを持つ人も多いだろう。一方で、治療法の進歩などにより、乳がん患者全体の9割が治癒しており、必ずしも「乳がん=死」ではない。乳がんについて正しく知り、適切な治療を受けるために必要なことを、昭和大学病院乳腺外科教授の明石定子医師にうかがった。
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乳がんはなぜ増えているのか
現在、乳がんは日本人女性がかかるがんの中で罹患数1位となっています。乳がんは欧米型のがんと言われてきましたが、このところ日本でも乳がん患者が急増しており、2008年には20人に1人だった罹患率が2020年には9人に1人と、12年の間に倍増しています。これは他のがんと比べてもきわめて高い増加率です。
これだけ乳がんが増えている背景には、いくつかの理由が考えられます。まず挙げられるのが、食生活の変化です。乳がん発症リスクを抑える大豆食品の摂取が減り、動物性脂肪が多い欧米型食生活に移行してきたことが関わっているのではないかと言われています。