現在、男性が使える避妊の選択肢は、不妊手術(パイプカット)を除けば、コンドームがほとんど唯一の方法です。将来的な選択肢として、精子の生成を抑制する、いわば「男性用避妊ピル」の研究開発が海外で進められているものの、実用化までにはまだ時間がかかるとされています。ちなみに、コンドームといえば男性用をイメージしますが、女性が腟に入れて使用するタイプもあります。以前は日本でも女性用コンドームが販売されていましたが2011年より製造中止になっています。
そして、日本では男性用コンドームによる避妊が大半を占めています。経口避妊薬(低用量ピル)や子宮内避妊具(IUS/IUD)のような女性主体の避妊法を行うには婦人科(産婦人科)などの受診を必要とし、費用もかかることもあり、避妊法としては普及が進んでいるとはいえません(経口避妊薬2.6%、子宮内避妊具0.3%)。一方、コンドームは全国の薬局やコンビニで手軽に買え、安価でもあるため、避妊というとコンドームを選択する人が多いのかもしれません。
ただし、効果の高い避妊をしたいなら、コンドームで性感染症予防と避妊を行いつつ、コンドーム以外の避妊法も併用するデュアル・プロテクション(dual protection。二重の防御)がすすめられています。
アメリカのCDC(Centers for Disease Control and Prevention。疾病対策予防センター)の調査ではコンドームを一般的な方法で1年間避妊に使用した場合の妊娠率は約18%。さまざまな避妊方法がある中でコンドームの避妊効果は高いとはいえません。
また、本来、セックスは対等なコミュニケーションのもと性的同意が成り立つものです。しかし実際は、女性が男性にコンドームをつけるよう求めても拒否されるケースや、コンドームを途中で外されてしまうケースもあります。「避妊に協力しないセックスは性暴力につながる」ということを知ってほしいと思います。
避妊効果が高い女性主体の避妊法
日本で選択できる主な避妊方法は、男性用コンドーム、低用量ピル、 IUD(子宮内避妊具)/IUS(黄体ホルモンが持続的に放出される子宮内避妊システム)です。一方、世界では避妊インプラント(黄体ホルモンを放出する小さなマッチ棒状の器具を上腕に挿入する方法)、避妊注射(お腹などに黄体ホルモンを注射する方法)、避妊パッチ(黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれるパッチをお腹などに貼る方法)、避妊腟リング(黄体ホルモンと卵胞ホルモンを放出する柔らかいシリコン製のリングを自分で腟の奥に挿入する方法)など多様な女性主体の避妊方法があります。
低用量ピルを一般的な方法で1年間避妊に使用した場合の妊娠率は7%、銅付加IUDは0.8%、IUSは0.1~0.4%であり、コンドームと比べてずっと高い確率で避妊することができます。なお、避妊注射、避妊インプラント、避妊腟リングはいずれもコンドームよりも避妊効果が高く、WHOが指定する必須医薬品(人口の大多数の人が健康を保つために必要不可欠で、誰もがアクセスできる価格で提供されるべきもの)のリストにも入っている安全な方法なのですが、日本では認可されていません。
アメリカ産婦人科学会は、若年層の避妊方法として、飲み忘れ等が起きやすい低用量ピルではなく、長期間作用型可逆的避妊法であるIUSやIUD、避妊インプラントを推奨しています。なお、海外では低用量ピルや避妊パッチなどを薬局やユースクリニックと呼ばれる若者向けのクリニックで安価に、または無料で入手できる国もあります。
日本でも、低用量ピル、IUD/IUSがもっと安価にアクセスしやすくなること、海外のような多様な避妊の選択肢が認可されて女性自身が自分にあう避妊方法を選びやすくなることが必要だと思います。