DSDは性というデリケートな問題にかかわることですので、むしろ精神面での悩みがついて回るのではないかと思います。なかなか周囲に相談しづらいということもあり、側からは元気そうに見えても、臨床心理士や遺伝カウンセラーなどによるサポートが必要なこともあるでしょう。その機会をつくるためにも、私が勤める大阪母子医療センターでは、特に症状はなくてもフォローアップのために年に1回ぐらいは病院に来てもらうようにしています。
――たとえば学校などで集団生活を送るとき、外性器の見た目などが気になって、トイレや着替え、入浴等に抵抗を感じるということはないのでしょうか。
特に男の子の場合、手術をしても陰茎の形が皆と少し違うということが多いので、本人が自分の外性器を恥ずかしいと思わないよう、小さい頃から「それは病気ではなく、悪いものでもないから大丈夫だよ」「手術をしたからそういう形になっているんだよ」と正直に理由を説明していきます。大阪母子医療センターでは、5歳頃から年齢や成長に応じた表現で、その子のからだの状態について情報提供を行っています。子どもが自分の体質を理解し、受け入れられるようになるためには、医療者は子どもが疑問を持ったことについて隠し事をしたりはぐらかしたりせず、正確な情報を伝えることが大切です。
それでもやはり気になってしまうときは、医学的理由で宿泊行事等のお風呂を別にしてもらうなど、学校に対応を頼むこともできると思います。とはいえ、外性器の形が気になるというのは、特に思春期であればよくあることでしょう。DSDに限らず、外性器の形が周りと多少違っていても、隠すのではなく、受け入れることができるような社会になってほしいと思います。DSDが「異常」や「病気」ではなく「体質の個体差」であるという考え方に変わってきたように、時代と共に「周りと違う」ことへの理解が広がっていくことを願っています。