早乙女 日常的にホルモン分泌量の変化が少ない男性と違い、女性の体調には月経周期によるホルモン変動が影響します。月経直前の黄体期はプロゲステロンの影響が強く、腟が潤いにくいので、セックスに慣れていないカップルが初めてセックスするときは黄体期を避けた方が良いと思います。一方、腟が潤いやすいのは、エストロゲン分泌が多い月経終了後です。潤滑ゼリーを使うという方法もありますが、身体が反応しないときはあまり役に立ちません。
性交痛が起こる原因のひとつに、少し濡れてきたくらいの段階で挿入されることで女性が痛みを感じて、性的な気分が下がり、腟が乾いてしまうということが挙げられます。なぜこのようなことになるかは、「性的反応の4段階」を知っていると参考になるでしょう。これは、1950年代にアメリカの研究者マスターズとジョンソンが行った研究で、人間が性的刺激を受けたときどのような反応を示すか、600人のボランティアの男女を対象に実験を行ったものです。これにより、性反応は性的興奮を覚える「興奮期」、興奮が高まった「高原(平坦)期」、「オルガズム期」、興奮が冷めていく「消退(回復)期」の4段階に分かれるとし、それぞれの段階でどのような変化が身体に起こっているのかが示されました。女性がまだ「興奮期」の段階で挿入すると、先ほど述べたような状況になりやすくなります。
明確に線引きするのは難しいですが、「興奮期」と「高原期」の違いを一言で言えば、理性が働くかどうか、というところかもしれません。「明日の朝は早く起きないと」「仕事であれをやっておかなければ」などの考えが頭をよぎるのであれば、それはまだ「興奮期」だということです。男性も「高原期」に入る前に何かの拍子でスーッと醒めてしまい、セックスできなくなるということはあるでしょうし、性欲があっても、体調次第で勃たない、濡れない場合もあります。女性が「高原期」に入っているかどうかは、見た目からはわかりませんから、女性は自分から「まだ」「痛い」等の意思表示をすることが大事です。
性交痛の原因には治療が必要なケースもあります。また、そもそもセックスに興味がないアセクシャルという性的指向が判明することもあります。気になる場合は、性機能外来などで性の専門家による診察を受けることも、ひとつの解決策です。
⑧“オーガズムに達しない女性はセックスに満足していない”
――男性は射精すればオーガズムを感じられますが、女性はいつもオーガズムに達することができるとは限りません。また、女性がオーガズムを得るための方法もはっきりとせず、オーガズムとは何かがわからない女性もいます。女性がオーガズムを得るためには何をすればいいのでしょうか。
早乙女 セックスで感じ方にギャップがあるのはここまで話してきた通りですが、やはりお互いに相手のオーガズムを引き出せればお互いに幸せが増すでしょう。また、ふたりが楽しいセックスでなければ関係を続けることはできないと思います。繰り返しになりますが、何が気持ちいいかは個人差があるので、結局はふたりの間での丁寧なコミュニケーションが大切だということになるでしょう。性的反応を引き出そうと一生懸命愛撫しても、それが相手の「ツボ」に入っていなければ、かえって逆効果になってしまいます。女性は男性まかせではなく、「こうしてくれると気持ちいい」ということを、セックスのときにもっと伝えていってほしいと思います。
ただ、オーガズムにこだわりすぎるのはどうでしょうか。オーガズムがなければいけないわけではありません。射精すればオーガズムを得られる男性と違い、女性のオーガズムは、たまたまいろいろなタイミングや体調がうまく合った結果として起こるのだと思います。女性の場合は自分のオーガズムを求めて工夫しないと達しにくいとも言えます。
女性が男性のために「イったふり」をさせられたり、イかないことにプレッシャーを感じたりするのも疑問です。セックスで大事なのはイケたかどうかということより、「今日楽しかったね」「なんだか気持ちよかった」という、ふたりの満足だと思いますね。