採卵の際、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激する排卵誘発法を使うことがあります。自然な排卵が起こりにくい方のためだけでなく、良質な卵子を複数確保することを目的として、排卵誘発剤を使用します。排卵誘発法にはいくつかの方法があり、女性の年齢や卵巣機能の状態、それまでの治療歴等を考慮しながら選択していきます。
次に、採卵した卵子を受精させます。培養液の中で卵子に精子をふりかけて受精させることを媒精と言います。この「ふりかけ法」で受精卵が得られなかったり、精子の数が少なくて受精が難しかったりするときは、顕微授精を行います。これは、状態の良い精子をひとつ選んで、顕微鏡で見ながら細いガラス針で卵子に注入する方法です。
受精卵を数日培養すると、子宮への着床が可能な状態=「胚」になります。胚を子宮内に戻すことを「胚移植」と言います。
胚移植には2種類あり、培養した胚をそのまま子宮に戻すのが「新鮮胚移植」です。子宮に戻す前にいったん凍結保存し、子宮内膜が着床に適した状態に整っているときに溶かして移植するケースもあり、これは「凍結融解胚移植」と言います。凍結融解胚移植では、新鮮胚移植より妊娠率が約10ポイント高まると言われています。
なお、子宮に移植する胚は、多胎妊娠を防ぐため、基本的に1回につき1つとされています。このため、初回の採卵で上質な卵子が複数採れたときには、受精させたあと、移植しなかった胚を凍結保存しておき、次回以降に融解して移植することもできます。
状態のよい受精卵を移植しているのに結果が出ないことが続く(良好な胚を4個以上かつ3回以上移植)ことを着床不全と言い、その場合、子宮内環境の検査や免疫による拒絶反応が起きていないか等の検査を行います。着床不全となる原因の多くは染色体異常と考えられていますが、胚の細胞の一部を採取して染色体を調べる検査(着床前診断)は検査費用がすべて自費になるうえ、保険診療で行う採卵と組み合わせて検査できる医療機関はかなり限られているのが現状です。また、着床前診断を行い、問題がないと診断されても、30%は妊娠に至らないという調査結果も出ています。
――体外受精は費用が高額というイメージがありますが、保険が適用されるようになってからはどれくらいの金額になったのでしょうか。
体外受精に健康保険が適用される前は、自治体の助成などでカバーできるかどうか、また医療機関によっても違いがあり、20万~70万円かかっていたと言われます。保険適応になった現在は、高額療養費制度を利用すると、自己負担額は最少で6万円~というデータが出ています。費用面のハードルが下がったことも関係しているのか、最近は30代前半くらいの、比較的若い世代からの相談も増えてきた印象があります。これには、不妊症についての情報がインターネットで得やすくなったことや、国や自治体が妊活サポートに関わる施策や啓発を積極的に行ってきたことも関係しているかもしれません。
逆に、以前は自治体による助成制度でカバーされていた自費診療のオプション治療が行えなくなったということも起こっています。一部は保険診療と併用可能な先進医療となっていますが、それらの検査費用は自費なので患者さんの負担が大きいと言えます。現在、先進医療に助成金が出ている自治体は限定的です。ただ、オプション治療が気軽にできなくなったからといって、どれだけ不都合があるかの判断は難しいところです。保険が適用されているのは、これまで安全性や効果が確認されてきた治療なので、基本的にはまずそちらを受けるということで問題ないと思います。
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