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監修:西弥生医師(産婦人科専門医、生殖医療専門医)
不妊症
生殖に影響する病気を持たない男女が妊娠を望むとき、避妊をやめて1年以内に妊娠しない状態のこと。「1年」という期間は、2009年からのWHO(世界保健機関)の定義による。ただし、定義とはまた別に、35歳以上の女性が不妊症の治療を望む場合には「半年以内」など、さらに短い期間での受診が推奨される。不妊症の原因は男女どちらにもあるが、検査をしても原因不明となることも多い。
不妊症の検査は未婚でも受けられるが、事実婚であれば自治体の検査助成金を受け取れることが多い。なお、治療を受ける場合は、基本的に法律上の夫婦(事実婚を含む)に限定される。
プレコンセプションケア(Preconception care)
コンセプション(Conception)は「受胎」を意味する英語。世界では妊産婦死亡原因の4分の1が妊娠前からの健康問題にあることから、2006年にアメリカの疾病管理予防センター(CDC)がプレコンセプションケアを提唱し、2012年に世界保健機関(WHO)が「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義した。妊活中の人だけではなく、前思春期の10歳頃から生殖可能年齢にあるすべての人々が対象となる。日本においては妊娠・出産時の母子死亡率は低いが、若い女性の過度なダイエットなどを原因とした低出生体重児出産の増加と、それに起因する低出生体重児たちの将来の健康問題(心疾患、高血圧等)が懸念されているほか、性教育の遅れなどから、妊娠出産に必要な知識が不十分という状況が見られる。2015年、国立成育医療研究センターが日本で初めてプレコンセプションケアセンターを開設し、啓発や相談事業等を行っている。
AMH検査
卵巣予備能検査とも呼ばれる血液検査。卵子の元となる原始卵胞(らんぽう)は、女性が胎児のときにつくられ、年齢とともに減少する。AMH(Anti-Mullerian Hormon、抗ミュラー管ホルモン)は発育過程の卵胞から分泌されるホルモンで、その値は卵巣に残っている原始卵胞の数を反映すると考えられている。AMHの値はばらつきが大きく、正常値が設定できないほか、AMHの値自体が妊娠の可否を示すものではないため、値がゼロに近くても妊娠の可能性はある。ただし、若い年齢で非常に低い値の場合は不妊治療を早めに始めることが望ましいとされる。逆にAMHの値が高い場合は、月経異常や不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があり、早期の受診が推奨される。
卵子凍結(未受精卵凍結)
すぐに妊娠する予定のない女性が将来の妊娠に備えて、卵巣から卵子を取り出し、−196℃の液体窒素の中で凍結保存しておくこと。がんなど卵巣の働きに影響を与える可能性がある病気の治療に先立って行うケースを「医学的適応」の卵子凍結と呼ぶ。他方で、健康な女性も「社会的(ノンメディカル)卵子凍結」を行うことができる。なお、卵子凍結では多くの卵子を採卵できるよう、排卵誘発剤を使用するのが一般的。
卵子凍結は自由診療だが、社会的卵子凍結に対して、企業や自治体で費用の助成を行うところも出てきている。ただし、凍結した卵子を融解して受精させ、受精卵が胚(子宮に移植できる状態まで細胞分裂が進んだ受精卵のこと)になるまでの間に破損する等の可能性もあるため、高度生殖補助医療(体外受精等)で行われる受精卵凍結(胚凍結)よりも出生率は低い。日本産婦人科学会は、海外のデータを基に凍結卵子1個あたりの出生率は4.5〜12%と報告している。
また、凍結した卵子は若いままでも、胚を移植する母体の年齢が上昇すれば、妊娠出産の健康リスクも上昇する。その他、自然妊娠したり、精子を提供するパートナーが見つからなかったりすることで、将来的に凍結卵子を使わない可能性についても検討が必要。
タイミング法
最も妊娠しやすい日(排卵日2日前~排卵日)に性交し、妊娠を試みる方法。