不妊治療を受けるにあたり、仕事との両立が可能なのか、医療機関をどのように選べばよいのか、痛みを伴う治療や検査はあるのかなど、気になることがいろいろ出てくるだろう。プライバシーに関わることだけに、身近な人にも相談できなかったり、限られた診察時間では担当医に聞きにくかったりすることもあるかもしれない。不妊治療について多くの人が抱く疑問について、東京・高田馬場「桜の芽クリニック」院長・西弥生医師にうかがった。
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Q1.将来子どもがほしいと考えていますが、結婚したい相手がいません。独身女性でも不妊治療を受けることはできますか?
Q2.不妊治療は仕事との両立が難しいのではないかと心配です。
Q3.不妊治療の中で、痛みを伴うものはありますか。
Q4.不妊治療を受けるときの医療機関を選ぶポイントを知りたいです。
Q5.「妊活」にいいと言われるサプリメントや漢方薬などは積極的に利用したほうがいいのでしょうか。
Q6.不妊治療を受けているときに感じるつらい気持ちを誰にも打ち明けられません。メンタル面でのサポートを受けられるところはあるのでしょうか。
Q7.思うような結果が出なかったとき、不妊治療をいつまで続けるか、どのように判断すればよいのでしょうか。
Q1.将来子どもがほしいと考えていますが、結婚したい相手がいません。独身女性でも不妊治療を受けることはできますか?
まず、不妊症の検査や卵子凍結は、基本的に結婚しているかどうかは関係ありません。また、卵巣嚢腫や子宮筋腫など婦人科系の不妊の原因を治療することも可能です。一方、パートナーが必要な治療、たとえば人工授精や体外受精について言うと、夫婦であることが前提とされています。日本産科婦人科学会のガイドラインでは、入籍していない事実婚のカップルの治療は容認するとされていますが、実際に治療を行うかどうかはそれぞれのクリニックの判断によります。双方に他の婚姻関係がないことを証明する書類を提出したり、父親として生まれた子の認知を約束したりするなど、条件付きでの治療となることが多いようです。なお、国は不妊治療の保険適用は事実婚のカップルも対象とすると定めています。
未婚女性への第三者からの精子提供に関して現時点では法的な規制はありませんが、日本産科婦人科学会のガイドラインでは、提供対象は「法律上の夫婦」であり、かつ夫が「(精子提供以外の方法では妊娠の可能性がない)男性不妊」のケースに限定されており、独身、事実婚、また同性カップルは範囲外です。さまざまな事情で未婚女性が精子提供を受けるケースもあるようですが、国内でのサポート体制が整っていない現状では、女性の精神的負担が懸念されます。また、海外の精子バンクの利用は、言葉の壁や法律の違いなどもあり、安易にお勧めできません。
Q2.不妊治療は仕事との両立が難しいのではないかと心配です。
まず所要時間で言うと、基本的には不妊治療で入院が必要ということはありません。採卵当日は2~3時間かかるので、半日休暇などの取得が必要かもしれませんが、施術後に仕事を行うことは問題ありません。医療機関によっては待ち時間が長いので、それも含めて調整できるといいですね。
通院の頻度としては、タイミング法と人工授精の段階では月に1~2回、体外受精では月経中から1~2週間の間に最低3回と見ておいてください。このとき、月経周期が不安定だと通院日が定まらず、予定が立てにくい可能性がありますので、仕事のスケジュールが柔軟に組める環境が望ましいです。もし平日に休みにくい場合は、休日や夜間に対応している医療機関に通うという選択肢もあります。ただ、地域によっては通える範囲に不妊治療を受けられる医療機関が少なく、そもそも選ぶ余地がないなどの難しさもあるようです。
不妊治療を受ける人が増えていることを受けて、働きながら不妊治療をしやすい環境整備に向け、国も後押しをしています。たとえば、厚生労働省は、職場に提出する「不妊治療連絡カード」を作成し、働きながら不妊治療を受けることへの理解を企業に呼びかけています(厚生労働省HP「不妊治療と仕事の両立について」参照)。このカードに、主治医から治療を実施する時期や必要な配慮について記載してもらい、治療のために利用できる制度(休暇制度、休職制度、フレックスタイム制度、テレワークなど)を勤務先に申請します。プライバシー保護が前提となりますが、妊娠出産と違い、不妊治療はいつまでに終了するという期限が見えにくいので、職場の理解が得にくいこともあるでしょう。「不妊治療連絡カード」は、そうしたときのコミュニケーションツールという位置付けで、もちろん男性の不妊治療でも使えます。
Q3.不妊治療の中で、痛みを伴うものはありますか。
たとえば、採卵では腟内に器具を入れて卵巣に針を刺しますが、局所麻酔をして行うので痛みは感じません。また、当院では甲状腺機能への影響を懸念して行っていませんが、卵管の通過性を調べる卵管造影検査や通水検査は、強い痛みを感じる人もいます。「これくらいなら大丈夫です」とおっしゃる方が多いですが、痛みの程度は個人差が大きいので、つらい時には遠慮なく検査中に伝えましょう。