基礎知識編では、性的多様性に関係する基本的な用語を紹介します。ここに挙げたもの以外にもさまざまな用語があり、性的多様性を表現する新しい言葉や定義も生まれ続けています。「わかったつもり」で固定観念に陥らないよう気をつけつつ、性的多様性を理解するための入り口として活用してください。(監修:加藤秀一・明治学院大学社会学部教授)
◆【性的多様性について知ろう(前編)~LGBTって、SOGIって何?】
◆【性的多様性について知ろう(後編)~差別やハラスメントのない社会をつくるには】
もあわせてご覧ください。
SOGI(ソジ)
「Sexual Orientation(セクシュアル・オリエンテーション=性的指向)」と「Gender Identity(ジェンダー・アイデンティティ=性自認、性同一性)」の頭文字をとり、性的マジョリティも含めたすべての人の性のあり方を表現する言葉。SOGIに「Gender Expression(ジェンダー・エクスプレッション=ジェンダー表現)」と「Sex Characteristics(セックス・キャラクタリスティックス=からだの性的特徴)」を加えて、「SOGIESC(ソジエスク)」と表記することもある。
性的指向(Sexual Orientation : SO)
恋愛感情や性的欲求がどの性別の人に向くか、あるいは向かないかを示す言葉。こうした感情の動きは自ら「志す」志向ではなく、特定の性的行為やからだの部位などに性的興味を抱く趣味や好み(嗜好)でもないため、「指向」という言葉で表現される。
性的指向に関連する言葉としては、ヘテロセクシュアル(性的指向が異性)、レズビアンやゲイ(性的指向が同性)、バイセクシュアル(性的指向が女性と男性の両方)、パンセクシュアル(性的指向があらゆる性)、アセクシュアル(性的指向がどの性にも向かない)などがある。
ジェンダー・アイデンティティ(Gender Identity : GI)
からだの形態や機能とは別次元の、内面の深い部分で自分にとって自然な性別をどう認識するかを示す言葉。性同一性、性自認などと訳される。関連する言葉としては、シスジェンダー(性別違和がない人)、トランスジェンダー(性別違和がある人)、Xジェンダー/ノンバイナリー(性別を固定しない人)などがある。
性別違和(Gender Dysphoria)
出生時にからだの形状をもとに割り当てられた性(Assigned Gender)と、ジェンダー・アイデンティティとに不一致を感じ、葛藤を生じている状態。医学用語の「性同一性障害」の代わりに用いられることもあるが病名ではない。性別違和を解消するため、ジェンダー・アイデンティティに合った性別の持ち主として生活しようとしている、あるいはすでに生活している人がトランスジェンダーである。
ジェンダー表現(Gender Expression)
一人称(「私」「俺」「僕」など)、服装、髪型、化粧、しぐさ、言葉遣いなどで性別を表すこと。ジェンダー表現はジェンダー・アイデンティティと一致することも多いが、必ずしもそうなるとは言えず、ジェンダー・アイデンティティが男性でも女性のようなジェンダー表現をしたり、ジェンダー・アイデンティティが女性でも男性のようなジェンダー表現をしたりすることもある。また、ジェンダー表現は常に固定されているとも限らず、ジェンダー表現をもとに性的指向やジェンダー・アイデンティティを判断することはできない。どのようなジェンダー表現がいわゆる「男らしい」「女らしい」かは、社会や時代の性に対する意識や価値観によって変わってくる。