小島さんはお母様との関係ですごく悩まれて、ご自分が子どもを産む時に怖くなかったですか?
小島 怖かったです。私は女の子を産みたくなかった。女の子を産んだら、私と母の関係を繰り返すのではないかという恐怖は大きくて、「神様、女の子はやめてください」と、ずっと祈ってました。そして私が産んだのは男の子でしたけど、やっぱり子どもに対して「わーっ!」と怒鳴ってしまう自分がいて、二人目を妊娠した時に、また臨床心理士の先生に相談しました。そうやって繰り返し専門家の助けを借りながら、自分の考えを整理していったんです。今思えば、もし女の子を産んでも愉快に育てていただろうと思いますけど、結果として二人とも男の子。性別が違ったことによって、「この人は私とは違う人間なのだ」ということがわかりやすくなったと思います。何が違うって、チンチンついてないんだ、私(笑)。「ママ、タマタマ打っちゃった、いたーい」って言われても「ごめん、ママにはその痛みわからない」って(笑)。
仁藤 息子さんたちは今10代ですよね。性的なことに関心を持った時、どういうふうに性のことを教えようって、お父さんと話したりしますか? 性教育に悩むお母さんは多くて、私もよく質問されるんです。
小島 夫とも話しますし、小さい頃から普通に話してます。たとえば一緒にお風呂に入ると、私の性器を「ママ、ここ何?」とか聞いてくるんですよ。そうしたら、
「お! いいところに気がつきましたね。ここは君が出てきたところです。ママのお腹に赤ちゃんの入る部屋があるんだよ」
「なんでそこに赤ちゃんが入るの?」
「素晴らしい質問ですね! ママのここに卵の倉庫があってね、その卵には設計図が半分ずつ入ってるの。もう半分の設計図はパパの中にあって、それがママのお部屋の中でくっついたから、君が出てきたんだよ」
「パパの設計図はどこから出てきたの?」
「ご説明しましょう。なぜ君のチンチンは朝、硬くなっているんでしょうか。それはパパがママのお部屋の中に設計図のお手紙を届けるためにおチンチンを入れる、そのための便利な機能です。素晴らしいね。人間の身体ってよくできてるね!」
「パパとママは今もそういうことするの?」
「あのね、そういうことは親子であっても聞いちゃいけないんだよ。それはとっても大事なことだから。パパとママが二人で大切にすることだから」
そんな具合に一問一答で、教えていったんです。それこそ2、3歳から、その時の彼らにわかるような言葉で。小学校3年生くらいまでには、ほぼ性教育は終わりますよ。
映画の『レ・ミゼラブル』を見た時、買春についても話しました。なぜ彼女が泣きながら歌い、あの男の人はチャリンとお金を投げつけていったのか。1回ではわかりませんから、彼らが年齢を重ねていくたびに、折に触れて話しています。私たちは今オーストラリアに住んでいますが、オーストラリアの性教育では、性病やコンドームの話、セックスワーカー、性的搾取の話もしてる。息子たちは学校でもちゃんと聞いてきます。
仁藤 すごい! 小島さんに性教育本を出してほしい。生理のしくみもよく知らずに妊娠してしまう女の子にたくさん出会うので、私もなるべく話すようにしてるんですけど、「そんな話するの夢乃ちゃんくらいしかいないよ」って言われるんです。
Colaboにつながる女の子に、もうじき赤ちゃんが生まれるんです。その子の家族や子どもの父親には頼れない状況なんですけど、ある女の子が――その子も裸足で家出してきた子なんですけど――「○○ちゃんが赤ちゃんができて悩んでる姿を見てて、私はまだ子どもだし、何も言えなかったけど、そのことを聞いて私はうれしかったし、その子が生まれたら、○○ちゃんが買い物とか行きたい時、1時間ぐらいなら私が見とくよ」って。それを聞いた妊娠中の女の子はうれしそうに笑いながら、「え? 買い物1時間じゃ終わらないよ。3時間はかかる」とか言うんで、みんなで笑ったんですけど(笑)。そういうことが彼女の支えにもなると思うし、彼女たちの間にそういう関係性ができていることにうれしくなりました。そんな支え合いがもっとできればいいなって思います。
小島 自分ひとりで乗り越えていくのはすごく難しいことですよね。池にはまっている時は、自分が池の中にいることがわからない。水面から目が出た時に初めてわかる。だから、「こっちが岸だよ」って呼んでくれる存在が必要です。仁藤さんのような方がもっと増えて、子どもたちがいろんな場所で、そういう大人に出会えるようにしていきたいですね。
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