映画『インディペンデントリビング』より。©️ぶんぶんフィルムズ
映画制作を通して見えてきたこと
田中 ところでこの映画の登場人物は男性が多いので、普段、女の子を相手に活動する機会が多い仁藤さんはどう見てくれるのかなって思っていたんです。そのあたりはいかがでしたか?
仁藤 単純な印象として、「男の人が多く登場する映画だな」と思いました。どうして女性が少ないのか、そのことは監督にぜひ聞いてみたいと思っていたんです。そもそも自立生活センターの利用者に女性が少ないのですか?
田中 少ないですね。女性の障害者は定着しにくかったり、介助する女性ヘルパーが長続きしにくかったり、という状況が実際にあります。自立生活を目指す障害者は世の中の他の人たちと平等でありたい、他の人たちに与えられている当然の権利を自分たちも欲しいと思って一般社会とのすり合わせを試みる。でもその先にある一般社会って、男性中心社会なんですね。だから女性障害者は、障害者であり女性であるという、二重の生きづらさを抱えることになる。その結果、定着が難しいというのはあるのかなと。女性ヘルパーについても、労働全体としてそうですが、結婚や出産といったライフイベントにどこまで対応できるのかって問題がありますよね。この映画では映っていない部分なのですが、映っていないからこそ、そんな支援現場の課題みたいなものは感じられるかもしれないなと思います。
仁藤 現場がそういう状況だっていうことですよね。
田中 はい、もうこの問題については、観客のみなさんに突っ込んでいただいて然るべきというか……。僕自身も課題だなと思いながら撮っていたところはあるので、批判をいただきながら上映活動の中で話をしていこうと考えているところです。
仁藤 私には介助者さんたちの自由な生き方とか仕事への向き合い方、利用者さんへの関わり方みたいなところが、すごくいいなというふうに思えたんです。でも、昼間はバンド活動をやりながら、夜勤の仕事をするって、男性だからできる、家族やパートナーにも理解されるところもあるのかなって感じがしました。
田中 なるほど。確かに夜間の介助とかになってくると女性だとやっぱり危険ですしね。しかも自立生活センターでは同性介助が基本なんですが、最近はトランスジェンダーの利用者、介助者も当然ながら出てきています。今後、制度設計自体を変えていかなきゃいけないかなっていうのは、すごい感じているんですよね。
仁藤 そこは私たちも「10代女子」「10代女性」という言葉を使い、女の子たちによる女の子向けの活動ということを打ち出しているので、性的マイノリティーの方にとっては入りづらさはあるだろうと思います。
田中 めっちゃ難しいですね。現場によっては今後も様々な問題が出てくるんじゃないかな。そんな大変な状況ですけどヘルパーたち……とりわけ今回撮影した介助者さんたちは、本当に付き合い方がとてもうまいなと感じたんです。特に相手を理解することを諦めないという点。障害種別によっては、意思疎通が難しい人もいます。発語が難しかったり、重度の知的障害があったりってこともあるけど、そうしたことを超えて分かろうとする。「目の奥を見る」っていう言葉が、この映画の中には出てきますが、仕事の制約の中で普通なら「ここまでかな」って思っちゃうところも諦めず時間を掛ける。その誠実な営みが、僕自身もすごく勉強になりました。
仁藤 Colaboで一緒に活動している20歳になったばかりのメンバーは、この映画を観て「一人ひとりが普通に生活して、やりたいことをやってるのがいいなって思った。社会にある障害に対して声を上げて一緒に行動する時と、その人が自由に生活する、一人で動く時があって、楽しそうだった! ルールもおせっかいがなくていい。Colaboみたい」と感想をくれました。彼女は乳児院と児童養護施設で育って、18歳になって養護施設を出て別の施設に移ったものの「心を開かないならここはあなたの居場所じゃない」などと言われて出ていくことになった経験があります。家族に障害を持つ人もいて、彼女も施設をいろいろ経験しているので共感するところが多かったようです。「Colaboみたい」と言ってもらえて、うれしかったです。
田中 そうなんですね。
仁藤 それから別の10代のメンバーは、「それぞれ色んな事情がある中で、周りの人と関わりながら、自分らしく生きているのが良かった。私もちゃんと自立していこーと思った。自立って、ちゃんと人に相談もしながら生きるっていう意味で。みんながみんな、助け合ってる。私も精神障害を持っていて、仲間とかに助けられて今日常を送れてる。時にはうまくいかないこともあるし、苦しむこともあるけど、私らしさを大事にしてくれた人たちのおかげで生きてるなあって思う。映画に出てくるセンターと、Colaboは、やりたいことに対して背中を押してくれるところとか、自立するためにどうしたらいいかを一緒に考えていくスタイルや、アットホームなところ、社会で生活するために必要なことを一緒に経験してくれるところも似てると思った」と言っていました。
田中 Colaboと夢宙センターって本当に似ているんですね。夢宙センターのみんなにも会ってほしいなあ。ぜひ大阪へ行ってもらえる機会を考えます。
colabo(コラボ)
一般社団法人
『すべての少女が 「衣食住」と「関係性」を持ち、困難を抱える少女が搾取や暴力に行き着かなくてよい社会』を目指して活動する非営利団体。2011年に仁藤夢乃を代表として設立。10代の少女たちと支援する/される関係ではなく「共に考え、行動する」ことを大切にしており、虐待や性暴力被害を経験した10代の女性たちとともにアウトリーチや、虐待や性搾取の実態を伝える活動や提言を行っている。
