お金持ちとの玉の輿結婚を夢見て、医者や弁護士などとの合コンを繰り返す主人公の桜子をコミカルに描いたこのドラマは、「愛は年収」というキャッチフレーズとともに大ヒットとなった。
桜子は、男性の「年収」のみならず、不動産やゴルフ会員権、果ては競走馬といった「資産」もチェックする。お金持ち度を探るには、「資産」という尺度が「年収」以上に重要であることを分かっているのだ。
国の「お金持ち度」についても、二つの尺度がある。
最も一般的なのが国内総生産(GDP)だ。その国の経済が生み出した価値の総計であり、「年収」に相当する。したがって、GDPが大きければ大きいほどその国は豊かであると言えるわけだ。
一方、国の資産に相当するのが「国富」だ。GDPが経済の「フロー」を示すのに対して、国富は「ストック」と呼ばれることもある。
国富は俗称で、正式には「国民経済計算のストック編」である。企業の決算で言えば、借金と資産の額を示す貸借対照表に相当するもので、国全体の経済状況についての統計である「国民経済計算」では、損益計算書に相当する「フロー編」もあわせて公表されている。
国富は、文字通り国の資産をすべて集計したものだ。政府や地方自治体はもちろん、国民一人ひとりが持っているすべての資産が対象となり、預金や株式の金融資産、不動産なども集計される。
その一方で、個人の場合と同様に、負債(借金)についても集計される。そして、資産から負債を差し引いた正味の資産が「国富」となるのだ。
国富を算出するのは大変な作業だ。「あなたの年収は?」という質問にはすぐに答えられるが、「資産は?」という質問には、すぐには答えられない。
マンションを所有していても、その価格の算出は容易ではないし、株式もいつの時点の株価を使うかで、その評価額は大きく異なってくる。これが国全体となれば集計は容易ではないため、「国富」については毎年2月をめどに、前々年の年末のデータが発表されている。
2008年2月8日に発表された06年末のデータを見てみよう。
土地や建物などの「資産」の合計は8561兆8000億円、一方「負債」は5845兆2000億円で、差し引きの「国富」は2716兆6000億円、前年度末から2.9%増と、9年ぶりに増加した。輸出が好調だったことなどから海外にある資産が増加したこと、地価が16年ぶりに上昇したことなどが、国富を増やす要因となった。
国富はGDP同様に、国の「お金持ち度」を示す重要な尺度だが、その集計に時間がかかる。このため、3カ月ごとに発表されるGDPに注目が集まりがちだ。しかし、GDPだけでその国の豊かさを測ることは危険だ。
「やまとなでしこ」の桜子は、「お金持ち度」を測る際には、年収だけではなく、資産が重要であることが分かっていた。国の「お金持ち度」についても、「GDP」という年収だけではなく、「国富」という資産もしっかりとチェックをしておく必要があるのだ。