限られた範囲のお小遣いでやりくりしている子どもたちにとって、突発的な出費に対応するのは容易ではない。結局、「今回は特別だよ」と、親も臨時のお小遣いを出さざるを得なくなる。
補正予算は、政府が出す臨時のお小遣いだ。政府を親、国民を子どもと考えると、お小遣いに相当するのが予算で、各省庁を通じて配分される。
予算は新年度の4月からスタートし、途中の変更は原則として許されない。4月にお小遣いの額を決めたら、1年間は変えないというわけで、「当初予算」とも呼ばれている。
しかし、自転車が突然壊れてしまうように、予算を決めた段階では予想できなかった様々な事態によって、新たな予算が必要になることがある。そこで「補正予算」が登場する。
補正予算が組まれるのは、台風や地震によって大きな被害が出た場合の復旧費用が中心だ。しかし、2005年度には、アスベスト問題や新型インフルエンザへの対策費が、06年度には、いじめによる自殺が急増したことを受けて、その対策費が補正予算に計上されている。
この他、景気対策の一環として、補正予算が組まれることも多い。景気が悪化した場合、公共事業を増やして景気を下支えするために、補正予算が組まれるのだ。バブル経済崩壊後のデフレ不況の際には、景気の悪化が続く中、第1次補正予算、第2次補正予算と、立て続けに補正予算が組まれたこともあった。
必要に迫られて組まれる補正予算だが、もちろん財源は必要だ。当初予算には、急な支出に備えた「予備費」も計上されてはいるが、これでは足りない場合が多い。そこで、借金である国債を新たに発行、補正予算の財源を確保することになる。
子どもの求めに応じて臨時のお小遣いを出すために、親が借金をさらに重ねるというわけなのだ。
また、当初予定していたような税収が得られず、歳入の面での補正が行われることもある。この場合には「減額補正」となり、歳出増の場合と同様に、新たに国債を発行して対処することになる。
07年度も、補正予算が組まれた。災害対策費の他、高齢者医療費の負担増の凍結を決めたことによる費用や、原油高への対策費などが中心で、総額は約1兆8000億円。
ただし、国債の利払いが予想より少なくなっているために余剰費が生まれたことや、旧日本郵政公社からの国庫納付金が増えたことなどから、新たな国債を発行することなく、補正予算を組むことができた。
こうして作られた補正予算は、当初予算と同様に、国会で審議され、その承認を受けて初めて実行される。しかし、緊急を要することを理由に、当初予算と比べると短い審議時間で可決される場合が少なくなく、無駄な公共事業が大量に盛り込まれることもあった。
「補正予算」は、あくまで当初予算を補正するもの。国家財政が厳しさを増す中、必要なものは迅速に、しかし、安易な補正予算が組まれないよう、十分なチェックが必要なのである。