ジェフ・トレーシーという人物が莫大な資産をつぎ込んで結成した国際救助隊は、通常のレスキュー隊などが手に負えない状況になると、どこからともなくやってきて、窮地を救ってくれる。救助活動は本来、政府などの公的機関が行うべき仕事だが、これを肩代わりしてくれるのだ。
もし、日本で「国際救助隊」を結成しようとしたら、PFIとしての事業認定を受ける必要が出てくるだろう。
「PFI」はPrivate Finance Initiativeの略語だ。民間の資金やノウハウを使って、社会資本の整備や、公的サービスを提供することを言うが、日本語訳では「民間資金の主導による…」と分かりにくいことから、そのままPFIと呼ばれている。
国や自治体は、人々から集めた税金で、道路や橋の建設といった社会資本の整備や、国防や警察、医療に教育など公共サービスを提供している。しかし、競争原理が働かないことなどから非効率となり、国民の求めるサービスが十分に提供されない場合も少なくない。
そこで登場してきたのが、民間の活力の導入、いわゆる「民活」だ。PPP(Public Private Partnership)とも呼ばれる民活には、政府や自治体などが民間企業と共同で事業を行う「第3セクター方式」や、業務をそのまま民間に委ねる「民間委託」などがあり、PFIもその一つなのだ。
PFIと第3セクター方式の違いはどこにあるのか。
第3セクター方式は、政府や自治体などの公的機関が、民間と共同で事業を行うもので、資金や人材の供給、施設などの建設から管理まで、公的機関が深く関与する。政府がジェフ・トレーシーと手を組んで国際救助隊を組織し、自らもサンダーバードに同乗して現場に行くのが第3セクター方式なのだ。
一方、PFIでは、公的機関は資金を拠出しないのが原則だ。PFIでは民間企業などが資金を出して公共施設や組織を作り、その後の管理運営も行う。公的機関は事業を認定するだけで、責任もPFIの事業を行う民間企業が負う。公的機関は国際救助隊に資金援助は行わず、基本的にはサンダーバードに同乗することもないのである。
国も地方自治体も深刻な財政難に苦しむ中、民間の資金を活用できるPFIは急拡大している。病院や学校、美術館などの文化施設の他、2007年4月には山口県美祢市にPFIによる刑務所が誕生するなど、まったく新しい分野でも導入が進んでいるのだ。
しかし、公共サービスは採算を取りにくいものも多く、事業が破たんするケースも多い。また、効率や採算を重視するあまり、PFIでできた病院で「もうからない産婦人科は廃止します」といったサービスの低下が発生、結果的に人々の生活に支障が出ることも少なくない。
国際救助隊を結成したものの資金不足で活動ができなくなったり、「お金が払えないなら、サンダーバードは出動できません」といった事態も起こったりしているのである。
非効率で無駄の多い行政サービスを救う「国際救助隊」として期待されているPFI。しかし、ドラマのような大活躍はできていないのが、現実なのである。