「第3セクター」は、鉄道や公共施設など、公共的なサービスを提供する際の運営主体の一形態で、国や地方公共団体が、民間企業と共同出資して設立する。第3セクターでは、採算を無視し、無駄が多いと指摘される第1セクターの欠点を、高いコスト意識と利益を追求する第2セクターの民間活力によって補うことが期待できる。その一方で、第1セクターが参画することによって、第2セクターだけで行う場合よりも信頼性がアップ、許認可事務の円滑化や補助金導入が容易になるといったメリットも期待できる。
第1セクターと第2セクターの「いいとこ取り」をしようという第3セクターは、旧国鉄の分割・民営化に伴って廃止された路線の受け皿として設立され始め、その後は「地域や都市開発」や「観光・レジャー」、「農林水産」「教育・文化」など、様々な分野に広がっていった。
しかし、「第3セクター」という言葉がメディアに登場する時には、「経営難から大幅な赤字を計上…」といったあまりよくないニュースの場合が多い。総務省によると、2006年3月末現在、全国には9208法人の第3セクターがあるが、その内の38%が赤字、債務超過という事実上の倒産状態となっているものが5.4%も存在している。赤字の補てんには税金が投入され、経営が破たんしてしまった場合には、出資に使われた税金も損失となってしまうわけで、第3セクターの事業は思惑通りに進んでいないのが実情だ。
第3セクターの運営がうまくいっていないのは、「親方日の丸体質」による「甘え」が抜け切れていないためだと指摘されている。
第3セクターのトップは、国や自治体から派遣されているケースが多く、赤字になっても国や地方自治体が何とか面倒を見てくれるという「甘え」が生まれやすくなっている。また、第3セクターが担う事業には、公共性が高い一方で採算が取りにくいものが多く、「赤字になっても仕方がない…」といった「甘え」もあるようだ。
一方で、採算を重視しようとするあまり、サービスの低下を招く場合もあり、第1セクターと第2セクターの「悪いところ取り」となっている場合も少なくないのである。
こうした状況の中、第3セクターに代わる新たな試みも始まっている。PFI(Private Finance Initiative 民間資金等活用事業)もその一つだ。施設の建設から維持管理、運営など、公共的な事業を民間の資金と経営能力を活用して行うというもので、表面的には第3セクターと似た性格を持っている。しかし、第3セクターが「公」の部分が主導権を持っているのに対して、PFIは「民」が主導権を握り、従来は「公」にしか認められていなかった、刑務所や空港、橋や道路などの建設を行うというものなのである。
PFIによる事業が始まったのは、深刻な財政難にあった1992年のイギリスで、その後フランスやアメリカでも様々な分野で導入された。日本でも99年7月にPFI法が制定され、2007年5月には、山口県の「美祢社会復帰促進センター」という刑務所が、PFIによって設立されるなど、次第に広がりを見せている。
この他、公共施設の運営のみを民間に委託する「指定管理者制度」も2003年6月からスタート、コスト意識の高い民間活力を導入することで、少しでも効率を上げようという試みが行われている。
民間活力の導入のシンボルとして、急速に広がった「第3セクター」。しかし、結局は「親方日の丸体質」から抜けきれず、PFIなど新たな事業形態の導入を含め、改めてそのあり方が問われているのが現状なのである。