この問題を根本的に解決する方法が「消費税」だ。保護者から給食費を個別徴収するのではなく、消費税の形で徴収し、その上で給食を無償化するのである。
消費税は「間接税」の代表的なもので、物品やサービスなどの「消費」に対して課税するもの。消費税には、ガソリンやタバコといった課税対象を限定する「個別消費税」と、すべての消費に課税する「一般消費税」の2つがあるが、日本で消費税といえば「一般消費税」を指している。
「付加価値税」などの名称で世界中の国で採用されている消費税の利点は、徴収漏れが少なく、徴収コストが低い点にある。所得税や法人税などの「直接税」は、給食費のように、対象者から直接徴収するので、納税拒否や脱税などが生じやすい。また、税金を集めるためのコストも大きなものとなる。
これに対して、消費税は物を購入したり、サービスを受けたりする際に自動的に税を支払う。徴税逃れが困難で、誰もが税金を納めるという点で「公平」だ。
一方で、消費税は別の不公平を生む。「逆累進性(逆進性)」だ。所得税の場合、所得が大きくなると税率も上がる「累進課税」が採用されている。お金持ちの税率を高くしてより多くの税金を、そうでない人は低い税率を適用して税金を軽減し、所得格差を是正している。これに対して消費税は、所得水準が考慮されない。したがって、所得の低い人の税金が相対的に重くなる「逆累進性」があるのだ。
一長一短がある消費税だが、ヨーロッパ各国の税率は軒並み2ケタ。一方、日本は5%であることから、しばしば消費税の増税が、取りざたされてきた。
日本は2009年度末で816兆円という、膨大な財政赤字を抱えている。しかし、国民の資産は金融資産だけでも1400兆円以上と推計され、財政赤字を十分に補えるだけのお金がある。「支払えるのに、支払わない」という、給食費と同じ状況が日本全体でも発生しているので、消費税増税で赤字を減らす必要があるのではないかというのだ。
しかし、消費税の増税には抵抗感が強い。政府の支出はむだが多く、国民の役に立っていないので、その是正が先だ、という声が圧倒的。給食が大赤字なのは、作り方にむだがあるからで、そこをまず直せと、増税反対派は主張しているわけだ。
言及すると選挙に負ける要因ともなることから、「嫌われ者」にされてきた消費税。しかし、破綻寸前の国家財政を考えた時、消費税の増税論議は避けて通れない。政府の支出を見直すのは当然だが、直接税との比率も含めて、そのあり方を真剣に考える時が来ている。