日本相撲協会は現在、外国人の入門に「1部屋1人」という制限を実施しているが、これによって相撲界に入りたくても入れないでいる多くの外国人も出てきている。
経済分野でも、同様の制限がある。「外資規制」だ。
外国企業が日本企業の株式を保有する場合、経営上の影響力を抑えることを目的として、業種によっては保有比率に上限を設けている。
直接的な規制があるのはテレビ局などの放送業で、電波法・放送法によって外資の出資比率は20%未満とされ、これ以上の保有は認められていない。同様の規制は、NTTなどにも存在している。
また、外国為替法では、鉄道やエネルギーなどの社会インフラを担う企業について、外国人投資家が10%を超える株式を取得する場合は届け出を義務付けていて、場合によっては、取得を認めないこともある。
外資を規制するのは、国家の安全保障上の理由からだ。
万一、日本とアメリカの関係が極端に悪化した場合、テレビ局の経営権を握っているアメリカ企業が、アメリカに有利な報道をするようになっては困る。
また、鉄道会社の経営権が握られている場合、「言うことを聞かなければ、鉄道を止めてしまうぞ!」と脅しをかけてくるかもしれない。
こうした国家の安全保障上の理由から、社会インフラなどの分野については、外資の比率を押さえ込むことが必要とされてきたのだ。
しかし、外資規制に対しては、投資を行う外資の側はもちろん、日本国内からも反発する声が上がっている。
特定の分野に限るとはいえ、外資を排除しようとすることは、日本市場の閉鎖性を世界に示し、外国人投資家から見放される恐れがある、というのがその理由だ。国籍にとらわれることなく、世界中から投資を積極的に受け入れることこそが、日本経済の発展を可能にするというわけだ。
日本経済の閉鎖性の象徴とも言われることもある外資規制だが、同様の規制は世界中の国々に存在している。
最も開放的と考えられているアメリカでも、軍事分野を中心に様々な規制が存在している。また、中国企業がIBMのパソコン部門の買収を発表した際には、国家安全保障上の問題を引き起こすとして、これを阻止しようとする声も高まった。
バブル期の1980年代後半に、日本企業がロックフェラーセンターやコロンビア映画などを次々に買収した際にも、「アメリカの魂を売り渡すな!」という反対論が巻き起こっている。アメリカにも外資アレルギーは存在していて、決して日本特有のことではないのである。
実力第一主義の大相撲。世界各国から強い力士が集合すれば、より迫力のある取り組みが期待できる。しかし、日本の国技である以上、外国人ばかりになってしまっては、つまらなくなってしまうのも事実だ。
外資という「強い力士」をどこまで受け入れるのか…。かたくなに拒むことも、全く無防備に受け入れることも危険であり、広く国際的な視野に立って、その都度議論して行くことが重要なのである。