企業再生ファンドが担っているのは、この「救助隊」である。
沈没寸前の船を企業に置き換えてみよう。経営が悪化し、燃料である運転資金が不足すると同時に借金という余分な荷物が増えて、経営の継続が困難になり倒産寸前に…。後は清算されて消滅するのを待つだけという企業を再生する「救助隊」が、企業再生ファンドなのである。
「企業再生ファンド」は、投資家から集めた資金を使って、倒産、あるいは倒産寸前の企業を買収、自らの手で再建して、第三者に売却する。買収にはその株式を買い占めるという方法がとられるが、倒産寸前の企業だけに、その値段は極めて安い。したがって、もし再建に成功して売却できれば、莫大な利益を手にすることができる。沈没寸前でタダ同然のボロ船を買い取り、再び航行できるまでに修理して、高値で売却するというのが、企業再生ファンドのビジネスなのである。
企業再生ファンドはまず、倒産寸前の企業をチェック、その再建の可能性を探る。そして、再建が可能であると判断すると、買収に取りかかるが、その際に徹底的に買い叩く。買収額が「仕入れ値」に相当するだけに、安ければ安いほど良いのだ。
買収に成功すると、早速再建に乗り出す。多くの場合、社長を解任して、自らが経営者となり、徹底的なリストラを断行する。利益が期待できる部門以外は、容赦なく切り捨てられることから、従業員の大量解雇につながる場合もある。一方で、経営再建にかかる費用や運転資金、さらには借金を肩代わりするなど、十分にお金をかけて、企業の再建を目指す。沈没寸前の船を安く買い付け、船長をクビにして、自らが舵を握る。修理代から燃料代まで自分で支払う一方で、不要な部分はもちろん、一部の乗組員までも海に放り出し、徹底的な修理をするというわけだ。
「企業再生ファンド」のビジネス、その仕上げは再建した企業の売却で、具体的にはその株式を売却するという方法がとられる。修理を終えて蘇った船の新たな船主を捜して、売却するというわけだ。これによって、企業を買収する際に使った資金、さらには再建に使った資金を回収し、さらに利益をあげて企業再生ファンドのビジネスは終了となる。(ビジネスの具体例は、「企業再生ファンドのビジネス」で紹介)