何らかの経済活動を一緒に行って、生活の糧を得る共同体が「会社」というわけだ。
会社にはいくつかの形態があるが、最も一般的なものが「株式会社」である。「株式」という小口の有価証券の保有者である「株主」で会社を分け合おうというもので、英語で「株」を意味する“share”が、その実態をストレートに示している。
株主は、保有する株式の比率に応じて、会社の資産などを所有する一方で、その比率に応じて、会社があげた利益を「配当」という形で受け取ることができる。
また、株主は、社長を始めとした取締役の選任や、会社の重要な経営方針について、株主総会の場で、株式数に応じた「議決権」を行使することで関与していく。
こうした株式会社の仕組みは、分譲マンションとそっくりだ。分譲マンションは「住戸」の集合体で、土地はもちろん、建物の共有部分についても、「住戸」の数に応じて所有権が発生している。「住戸」の所有者は、「住民総会」での投票を通じて、「管理組合」の「理事長」を選び、マンションの管理方法などを決めていく。住戸=株式、住民総会=株主総会、管理組合=取締役会、理事長=社長、というわけである。
従業員は、「分譲マンション」で言えば、「管理組合」から委託を受けて管理・点検などを行うスタッフに相当する。「株主」とは直接関係を持たず、会社と雇用関係を結び、報酬を得る。そこで求められるのは、「取締役」と同様に、会社、そして雇い主である「株主」の利益のために働くことなのである。
自由に転売されて所有者が変わるという点でも、「株式会社」と「分譲マンション」は似ている。「株式」は、証券取引所で自由に売買され、絶えず所有者が変わっている。経営方針や、社長を始めとする取締役の人事も、株式を大量に所有している大株主の意向が反映される。このため、ある日突然、少数の「株主」によって株式が買い占められ、会社の経営権が奪われるという事態も発生する。「分譲マンション」の住戸がいつの間にか買い占められ、住民総会でそれまでの理事長を解任してしまうというわけなのだ。
また、「分譲マンション」では、人気が高くなればその価格が上昇、反対に構造上の欠陥が発覚した場合などには価格が下がる。「株式会社」の場合も同様で、その会社の業績が上がれば株価は上昇、反対に業績が悪化したり、何らかの不祥事が発生したりした場合などでは、大きく株価が下がり、会社全体の価値が下がってしまう。
「株式会社」全体の値段に相当するのが、「時価総額」だ。発行されている株式の数に、その時々の株価をかけたもので、株価×株式数=時価総額となる。したがって、「株式会社」を完全に買収するには、時価総額に相当する資金が必要となる。「分譲マンション」を丸ごと買うためには、すべての「住戸」を購入することになるのと同じである。
「株式会社」は株主と取締役などの経営陣、そして、従業員が「分譲マンション」のように、一つの屋根の下で経済活動を展開している。その姿は“company”の語源となった「共にパンを食べる仲間」そのものだ。
しかし、主役はあくまで株主。「株式会社」は株主のものであり、取締役も従業員も株主の利益のために働いて報酬を獲得し、株主の意向に逆らうことはできない。その仲間は、株式の売買を通じて、絶えず入れ替わり、「株式会社」の姿も変化を続けているのである。