「瑕疵担保責任」は、商取引において、買い手が確認できない「瑕疵」(欠陥や傷など)問題があった場合に、売り手が責任をもって補償(担保)すること。中古車を購入する場合、エンジンが不調だったり、ブレーキに欠陥があったりという不具合は、売り手だけが知る情報で、購入後に発覚して、高額の修理費が必要となる場合がある。そこで、一定期間内に発生した不具合は無償修理するといった保証を付けることで瑕疵担保責任を果たし、買い手を保護する。
ところが、東京都が豊洲の土地を購入する際、土壌汚染の可能性があるにもかかわらず、売主の東京ガスの瑕疵担保責任を免除した。故障する可能性がある中古車を、何の保証も付けずに購入したことから、契約時の責任者だった石原氏が批判に晒されたのである。
瑕疵担保責任は、売主やメーカーが品質保証を付けることで果たされるのが一般的だが、値引きで対応する場合もある。将来発生する瑕疵について保証するのではなく、その分だけ値引きをして販売するのだ。100万円の中古車を販売する場合、将来の不具合を見越して70万円に値引きするので、保証は付けないというわけだ。
大阪の森友学園に、国有地が不当に安く販売されたと指摘されている問題がこのケースだ。敷地内にゴミが埋まっている可能性があるため、売り手の財務省には瑕疵担保責任が発生していた。そこで財務省は、土地を格安で売却することで瑕疵担保責任を免責してもらい、将来発生するゴミ処理を森友学園に任せたのだ。
特約を付けるなど、瑕疵担保責任の実行方法は、売り手と買い手の交渉によって多様な形態を取る。その中で、大きな波紋を呼んだのが、日本長期信用銀行(長銀)の売却だった。経営破綻して国有化されていた長銀が、外資系投資ファンドのリップルウッドに売却される際、買収後に融資の焦げ付きが発生したら、売主である日本政府に、損失の埋め合わせを請求できるという特別な瑕疵担保条項が結ばれた。これを利用したリップルウッドは、そごうや第一ホテルなど、回収の見込みがある融資先についても「返済不能」として倒産に追い込み、その損失を請求する。事故を起こした長銀という中古車を購入したリップルウッドは、まだ使えるのに、「エンジンが壊れた!」「ラジエーターに穴が開いた!」と主張して、日本政府から巨額の修理費を引き出した。この結果、不良債権は大きく減少、リップルウッドは新車同様になった銀行を高値で売却して1000億円以上の利益を上げる。リップルウッドの戦略を見抜けず、巨額の税金を使って大儲けさせたとして、政府は厳しい批判を浴びたのだ。
瑕疵担保責任は、円滑な商取引を実現する上で必要不可欠な要素だが、時には悪用されることもある。中古車を購入する際には、どんな保証が付けられているかをしっかりと確認するように、全ての商取引において、瑕疵担保責任の問題を吟味しておくことが必要だ。