これとよく似ているのが、「外国人投資家」だ。外国人投資家は、日本の株式市場などで取引を行う投資家の中で、日本国内にはいない「非居住者」の企業や組織、個人のこと。
銀行や証券会社、投資会社や年金基金など、その形態は様々だが、その最大の特徴は、資金量が大きいことだ。外国人投資家の中には、巨額の資金を運用しているヘッジファンドなどが含まれていて、株式市場全体の流れを左右するほどの力を持っている。
2009年、東京証券取引所の売買高に占める外国人投資家の割合は53%。野球であれば、プロ野球で活躍している選手の半分以上が外国人プレーヤー、といった状態だ。
大きな取引シェアを持っていることから、市場では外国人投資家の動向が注目される。
東京株式市場では、取引開始直前に、「寄付(寄り付き)前外国証券 注文状況」が公表されている。外国人投資家を多く抱えている外資系証券会社の売り買いを集計したもので、寄り付きとはその日の最初に成立する取引のこと。外国人投資家は日本の証券会社を通じても売買を行うから、厳密な数字ではないが、大まかな動きを探るのには役立つため、市場関係者が注意を払っている。
より正確なデータとしては、東京証券取引所が毎週発表する「投資部門別売買動向」がある。「売り100万株、買い50万株で、50万株の売り越し」など、外国人投資家の動向が詳細に記載されているのである。どちらのデータからも、外国人が株式を「売り越す」と株価全体が下落、反対に「買い越す」と上昇するという強い相関関係が見てとれる。こうしたことから、「外国人投資家が売りだから、自分も売っておこうか……」と、その動きに追従する日本の投資家も現れ、その影響力をいっそう強めているのである。
しかし、外国人投資家は気まぐれでもある。もうけを出したら、さっさと手を引いてしまうこともある。長期的な観点から投資をするのではなく、短期の利ざやを狙う場合が少なくない。
公正な取引を重視するのも、外国人投資家の特徴である。日本の株式市場では、不十分な情報公開、古い慣習に基づいた取引など、市場の取引の公正さについての問題点が指摘されている。こうした状況にとりわけ敏感なのが外国人投資家で、公正な取引が確保されない場合には、市場からは撤退する場合もある。フェアプレーが保証されないなら、日本ではプレーしないと、母国に帰ってしまうわけだ。取引全体の半分以上を占める外国人投資家がいなくなれば、株価が大きく下落し、市場の活力がそがれることは必至である。
外国人投資家が活躍する一方で、日本人の投資家の存在感は希薄である。株式投資を嫌う個人は依然として多く、景気の低迷なども重なって、日本人プレーヤーは一向に増えないのが現状だ。また、数少ない日本人投資家の中には、国内の株式市場には目もくれず、ニューヨークやヨーロッパ、中国といった海外市場に投資する者も増えている。日本のプロ野球は無視して、メジャーリーグでプレーしているというわけだ。
外国人投資家無しには、存在し得なくなっている日本の株式市場だが、過度な依存は禁物だ。市場の公正性を高める一方で、日本人のプレーヤーを増やすなど、株式市場全体を活性化させることが求められている。