こんな時に役立つのがレストランガイドだ。ミシュランなどの本格的なガイドブックの他、雑誌や「口コミ」のサイトなど、様々な情報が発信され、レストラン選びの手助けとなっている。
株式をはじめとした投資の分野にもレストランガイドがある。証券会社や投資顧問会社などが提供する「投資判断」だ。企業の業績はもちろん、将来性やライバル企業の存在、経営者の資質に至るまで徹底的に分析、その上で今後の株価を予測し、投資家に売買のアドバイスをしてくれる。どの株式を買えば、「おいしい思い」ができるかを教えてくれるというわけだ。
一般的な投資判断は、対象銘柄を「買い」「中立」「売り」の3段階に分け、予想される株価を「1年後に+15%」などと具体的に示している。しかし、株価の予想を、日経平均株価などの株式市場の平均値に比べて、「より高くなる」「より安くなる」という形式で表現しているものがあったり、特に自信がある場合には「特別推奨銘柄」としたりと、様々な工夫を凝らした投資判断が提供されている。
投資判断で「中立」だった銘柄が「買い」に「格上げ」されると買い注文が増えて価格が上昇、反対に「格下げ」されると株価に対する下げの圧力となる。ミシュランの星が増えればレストランのお客が増え、星が減ればお客が減ってしまうのと同じである。
こうしたことから、投資判断(rating)が変更された途端に売買を仕掛けて利ざやを狙う「レーティングトレード」も行われている。投資判断が引き上げられると、我先にと買いに走り、株価が上がったところですかさず売り抜けるという具合だ。
投資家向けの情報としては、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社やスタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)などが発表する「信用格付け」が広く知られている。しかし、投資判断と信用格付けとは決定的に異なる。信用格付けは基本的に「債券」を対象としている。国家が発行する国債や企業が発行する社債などの債券は「借用証書」であり、借金がきちんと返済されるかどうかが重要なポイントとなる。したがって、信用格付けは、債券の信用力を示すもので、価格が上昇するかどうかを示すものではない。「格下げ」は債券が「紙くずになる危険性が高まりました」というメッセージであり、「価格が下がります」というメッセージではないのだ。「おいしいレストラン」を紹介するのが投資判断、食中毒を起こさない「安全なレストラン」を紹介するのが信用格付けといえるだろう。
株価などに影響を及ぼすこともある投資判断だが、うのみにするのは禁物だ。投資判断はあくまで証券会社や投資顧問会社のアドバイスであって、「おすすめ銘柄」であっても、値上がりを保証するものではない。ガイドブックに掲載されていた「おすすめのレストラン」に行ってみたら期待外れだったということも十分あり得る。
レストランガイド同様に、投資判断はあくまでも参考情報。過信は禁物であり、最後に決めるのは自分自身の投資判断、つまり「おいしい銘柄」を見分ける「舌」なのである。