「VIX指数」は株式市場における「ビビリポイント」だ。正式名称は「ボラティリティー・インデックス(Volatility Index)」で、アメリカのシカゴ・オプション取引所(CBOE)が、算出・公表している。
VIX指数は、アメリカの主要株価指数の一つである「S&P500」を対象としたオプション取引の動向から算出されている。オプション取引は、株価が下がった場合の損失を補てんする「相場保険」のようなもの。ボラティリティーは、価格変動の大きさ(リスク)を数値化したもので、保険料に相当するオプション料を算出する根拠となっている。リスクが大きくなると保険料が上昇するように、株価の変動が大きくなるとボラティリティーが上昇、反対に変動が小さくなるとボラティリティーは低下する。VIX 指数は、ボラティリティーの大きさを特殊な数式を使って集計したもので、市場の動揺が高まると上昇することから、「恐怖指数」という別名を持つ株式市場の「ビビリポイント」なのだ。
1993年から算出・公表が始まったVIX指数は、市場の動揺を敏感に映し出してきた。通常は10~20程度で推移しているが、大きな事件や問題が起こって、株式市場に動揺が広がった際には急上昇する。2001年9月の アメリカ同時多発テロでは44ポイント、08年9月のリーマン・ショック時には42ポイントで、08年10月の世界金融危機では89ポイントまで跳ね上がっている。40ポイントが一つの節目で、これを超えると、株式市場は異常な状態にあるとされているのだ。
VIX指数は、アメリカ以外の株式市場についても算出されるようになった。日本では日本経済新聞社が「日経平均ボラティリティー・インデックス」を公表、イギリスやドイツに加えて、中国でも同様の指数が公表されている。
市場がどの程度動揺しているかを把握できるVIX指数だが、近年はこれを使った取引も行われている。VIX指数を株価の一種と考え、市場が平穏でVIX指数が20ポイントの時に購入し、その後に市場に不安が高まってVIX指数が40ポイントになったら売却して利益を得るといった具合だ。市場の動揺を示す指数まで、売買の対象にしてしまうのは驚きだが、VIX指数を使った上場投資信託(ETF)もあって、個人投資家でも簡単に取引ができるようになっている。
2015年8月の中国・上海市場の株価急落に端を発した株価の乱高下の際には50ポイントを超えたことで、VIX指数には投資家の注目が集まっている。VIX指数による取引は上級者向けだが、市場の動きを知る上で、チェックしておく必要があるといえるだろう。