知人が、始まったばかりの結婚生活を報告する。結婚紹介所から紹介された男性と「お見合い結婚」をした彼女。結婚紹介所は、プロの目とネットワークで彼女の条件に合う男性を選び出した。しかし、運命の人を自分で探し出し、熱烈な恋愛の末に結婚…、という高揚感がないことが、彼女の物足りなさの一因となっているようだった。
「恋愛結婚」か「お見合い結婚」か…。結婚へ向けて、誰もが一度は迷う二つの選択肢だが、金融にも同じような選択肢がある。「直接金融」と「間接金融」だ。
金融とは、お金に余裕のある人が、お金を必要としている人に融資し、見返りとして利息や株式の配当などを受け取ること。ここで重要になるのが、お金を融資する相手、つまり、「嫁ぎ先」を決めることだ。
「直接金融」は、株式投資のように、お金の投入先を自分で選び出す「恋愛結婚」だ。一方、「間接金融」は、銀行など「結婚紹介所」にお金を預け、「嫁ぎ先」の選択を委ねる「お見合い結婚」に相当する。
「間接金融」は、銀行などの金融機関がお金を一括して預かり、これを企業や個人、国や地方自治体などに融資する。預金者は、自分のお金がどこに融資されたかを知ることはできないし、もちろん融資先を指定することもできない。お金の「嫁ぎ先」は、金融機関自身が決定し、預金者はそれに従うだけなのだ。
金融機関は、「結婚相談所」のプロとして、預かったお金の「嫁ぎ先」を厳しくチェックする。経営状態はどうか、返済能力はあるのか、返済できなくなった場合に備えた担保はあるのか…。預かったお金が、嫁ぎ先で幸せな生活を送ることができるように、全力を傾けるのである。
結婚生活が様々な理由で破綻するように、融資先の倒産などによって融資が焦げ付き、返済不能に陥ることもある。ところがこの場合でも、損失は原則として金融機関が被り、預金者に損失が発生することはない(金融機関が破綻した場合は例外で、状況によっては預金者に損失が発生する)。
すべてを金融機関に委ねる間接金融は、安全で間違いの少ないお金の結婚だ。しかし、よいことばかりではない。お金を預けた場合の見返りは利息だが、この水準が極めて低いのだ。
これに対して直接金融では、極めて大きな利益を得ることが可能だ。直接金融の代表的存在である株式投資の場合、投資したお金が数倍、数十倍になることもある。間接金融ではあり得ないことなのだ。
もちろん直接金融は、株式を購入した会社が倒産すると株式が紙くずになるといった大きなリスクを負っている。「ローリスク・ローリターン」の間接金融を選ぶか、「ハイリスク・ハイリターン」の直接金融を選ぶかは、お金を預ける人の意思で決まるのだ。
「恋愛結婚すればよかった…」という知人の女性に、仲間達は「長い交際の末の恋愛結婚でも、結婚後に、こんなはずじゃなかった…と、後悔する人もたくさんいる。お見合いの方が安心だよ」と言う。
戦後の日本では、「間接金融」という「お見合い結婚」が主流だったが、近年は「直接金融」の比率が増加している。しかし、安心感の得られる「間接金融」が、まだまだ高い人気を保持しているのが日本の現状なのである。