「出資法」は、投資の分野における労働基準法だ。投資は「お金の就職」であり、人々はお金を株式や投資信託、FX(外国為替証拠金取引)や不動産などに働きに出して、利益を上げようとする。様々な種類や形態があるお金の投資先(就職先)の中には、「元本保証・利息は10%以上」といった好条件を提示して資金を集めているものがある。ところが、実際に投資してみると、利息は支払われず、挙句の果て元金も返却されずに雲隠れされてしまった……といった「ブラック金融」が存在する。こんな事態を防いでお金という労働者を守り、就職先で命を落とすことが起こらないようにするために出資法が制定された。
出資法の正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」で、不特定多数からお金を集める際のルールを中心に定められている。出資法の中核は、「預かり金」の受け入れ禁止。預かり金は元本を保証した上で、不特定多数の人から集めるお金。銀行が当たり前のように受け入れているが、これは法律で認められているから。出資法は銀行法などで認められている場合を除いて、預かり金の受け入れを禁止していて、その範囲はクレジット会社やリース会社、消費者金融から、街中の貸金業者といったノンバンク、個人にまで及んでいる。出資法はまた、出資したお金に対する利益を確約することも禁止している。公務員ならいざ知らず、元本保証という「終身雇用」を掲げた上に、高い給与を約束してお金という労働者の求人活動を行うのは、ブラック金融の可能性がある。そこで、お金を出した途端に夜逃げしてしまうといったトラブルを回避するために、出資法に基づく厳しい規制が設けられている。
一方、クラウドファンディングを含めて、元本や利益を保証しなければ、不特定多数の人から資金を集めても出資法違反にはならない。出資法が禁じているのは、あくまで元本や利益を保証した上での資金集め。もし、こうした勧誘に出会ったら、違法なブラック金融の求人広告と考えて、絶対にお金を働きに出してはならないのだ。
出資法はこの他、高利貸しをなくすために、貸出金利の上限も定めているが、その効果は十分ではなく、違法な資金集めは後を絶たない。魅力的な勧誘文句に誘われてお金を出したものの、当初から運用するつもりはなく、借金の穴埋めや遊興費などに使われて取り戻せなくなるという事件が繰り返されている。
2017年4月、新たな出資法違反事件が発覚した。熊本県警は、投資話を持ちかけて違法に金を集めたとして山辺節子容疑者を出資法違反(預かり金の禁止)容疑で逮捕した。「私は大企業のつなぎ融資をしていて、出資すれば25%の利息が得られる」などと謳って資金を集めていたが、その大半が消え、出資法違反のブラック金融に、多くの人が騙されてしまった。ブラック金融を排除し、お金という労働者を守る出資法の知識を身に付けて、自分のお金を守るようにしたいものである。